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親のがん、子にどう伝える?…事実話し不安和らげる

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 親ががんになった時、幼い子どもは、大きな衝撃を受ける。何をどう伝え、支えれば良いのだろうか。(中島久美子)

感情ため込ませない工夫を

「がんの親をもつ子どものプログラム」で、娘の萌花ちゃんが制作した作品を手に体験を語る杉原佳子さん=藤原健撮影

 「何も言わなくても、子どもは気づくものですね」

 東京都文京区の色彩心理カウンセラー杉原佳子さん(50)は、2007年秋、乳がんと診断された時を振り返る。一人娘の萌花(もえか)ちゃん(10)は、当時まだ5歳。どう話すか、夫と相談していた時、誕生日カードをもらって驚いた。表紙に、二つの丸いおっぱいが描かれていた。実は、萌花ちゃんは、両親のただならぬ様子から、異変を察し、隣の部屋で2人の会話を聞いていた。

 杉原さんは、すぐに、乳がんになったことや、右の乳房はなくなっても一緒にお風呂に入れることを伝えた。萌花ちゃんは、じっと聞き入っていたという。

 がんになった時、幼い子どもに事実を伝えるか悩む親も多い。「子どもが心配する」「理解できないのではないか」とためらうためだ。

 がんの親を持つ子どもの支援グループ「Hope Tree(ホープ・ツリー)」代表で、東京共済病院(東京・中目黒)医療ソーシャルワーカーの大沢かおりさんは、「隠しても、たいていの子どもは気づき、実際より悪い方向に想像を膨らませ、『自分が悪い子だったから親ががんになってしまった』など子どもならではの間違った想像をしてしまう」と、事実を伝える意義を話す。

 説明する際は、三つのポイントがある。治療が子どもの生活へどう影響するかや、疑問はいつでも聞いてよいことも伝える。

 親のがんを知った子どもの反応は様々だが、大切なことがある。子どもが、わき上がる感情を表現し、ストレスを発散するすべを持つことだ。「Hope Tree」では、がん治療中の親を持つ小学生を対象に、自らの様々な感情に対処する力を養う支援プログラムを行う。米国のがん専門病院で実施されており、数人のグループで、がんを学び、工作や話し合いをする。

萌花ちゃんが作った『怒りバイバイサイコロ』。杉原さんは作品を通じて、萌花ちゃんの気持ちを知ることが出来たという

 たとえば、工作の一つに「怒りバイバイサイコロ」がある。イライラした時に、どうやって気持ちを鎮めるか。自分でよく考え、六つの面を絵や言葉で埋めていく。「おいしいものを食べる」「叫ぶ」など具体的な方法を自覚でき、感情をため込まないヒントを学べる。

 萌花ちゃんもプログラムに参加した。「お母さんが傷つく」と病気の話は避けてきたが、「どんな気持ちも表現してよい」と知り、「薬はいつまで飲むの」などと質問するようになった。杉原さんも、「子どもの前では元気なお母さんでいなきゃ」と振る舞ってきたが、薬の副作用でつらい時は、「5分だけ横になるね」と言えるようになった。

 大沢さんは、「がんの親を持つ子どもへの支援は始まったばかり。病院内で支援チームを作ったり、治療への理解を助けるため、病院見学ツアーを企画したり、取り組みが広がっています」と話している。

 支援プログラムの詳細や子どもにがんを伝えるポイントなどは、「Hope Tree」のホームページ(http://www.hope-tree.jp/)で紹介している。

子どもにがんを伝えるポイント
1 「がん」という病気であること 風邪など身近な病気との違いを明確にする。すぐに治らないことや、脱毛など抗がん剤独特の副作用を理解するためにも必要。
2 うつる病気ではないこと 子どもは、病気は、ばい菌がうつってかかるものと思いがち。これまで通り、抱きしめるなどのスキンシップも可能なことも併せて伝える。
3 誰のせいでもないこと 「自分のせいで親ががんになってしまった」と思い込み、自分を責める子どももいる。
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