いきいき快適生活
介護・シニア
見方を工夫 読書楽しもう
読書の秋。ところが、加齢などによって視力が衰え、本から遠ざかってしまったというシニアは多い。最近注目されている電子書籍端末などの機器を適切に活用すれば、読書を楽しむ助けになるという。
視野を把握 / 見やすい部分探す / 機器を活用
高齢になると、眼球の中にある水晶体の弾力が衰え、その厚みを変えることによってピントを合わせることが難しくなる。そのため、新聞などが読みづらくなる。いわゆる老眼の状態だ。それに加え、緑内障、加齢黄斑変性など視野に障害が出る病気になる場合も多い。ところが、一般的に視力の低下には敏感でも、視野の状態を正確に把握している人は意外に少ないという。
緑内障を患う京都市在住の男性(88)も、読書に困難を感じていた。同市の吉田眼科医院院長の吉田雅子さんは男性の視野を診察した上で、「残っている上半分の視野をうまく使ってみましょう。目線を心持ち下げ、見やすい部分を使うように意識すれば、読みやすくなります」と話しかけた。
男性は、大きな活字で印刷された本を買い、眼鏡とルーペを併用して読んでいたが、目の疲れに悩んでいた。そこで吉田さんは本のページに押し当てて使う棒状のルーペを紹介。「これなら、行を間違えることもなくなります」とアドバイス。早速試してみた男性は、「以前より楽に読めるようになった」と喜んでいた。
「まず、自分の見え方を理解すること。見えやすいポイントを探した上で、視力低下を補う機器を使えば、再び読書を楽しめるようになる人も多い」と吉田さんは話す。
では、高齢者が活用できる機器には、どのようなものがあるのか。国立障害者リハビリセンター神戸視力障害センター支援課長の山田信也さんは、「本のページを、拡大して画面に映し出す『拡大読書器』をはじめ、視覚障害者向け福祉機器の中には、文字が読みづらくなったシニアにとって役立つものがたくさんあります」と話す。
全国に4か所ある視力障害センターや、視覚障害者支援施設などでは、こうした機器の展示や相談業務を行っている。「シニア世代も気軽に利用してほしい。読みたい本を持ち込み、使用感を確かめてみてください」と山田さん。
IT(情報技術)を活用した読書支援も広がっている。徐々に普及し始めた電子書籍端末には文字拡大機能があり、視力の衰えた高齢者でも文字が読みやすい。また、インターネット上の図書館「サピエ図書館」は昨春から、公共図書館やボランティア団体などが製作・所蔵する2万タイトル以上の録音図書をパソコンや携帯電話を通して提供するサービスを始めている。文字を読むことが困難な人なら無料でダウンロードし、聞くことができる。利用登録が必要。
「読書を通して新しい情報に触れることは、生きがいにつながる。『高齢だから』と簡単にあきらめず、自分に適した機器などを工夫して使い、読書を楽しみ続けてほしい」と山田さんは話している。
シニアの読書支援を行っている団体の連絡先 |
---|
日本眼科医会 http://www.gankaikai.or.jp/ (電)03・5765・7755 |
日本ロービジョン学会 http://www.jslrr.org/ (電)086・464・0320 |
サピエ図書館 https://www.sapie.or.jp/ (電)06・6441・1078(利用登録は、同図書館の加盟会員団体に連絡して行う。携帯電話での使用はパケット定額サービス加入者のみ) |
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。