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108歳 最高齢での受賞

第11回ニューエルダーシチズン大賞
新しいことに挑戦し続ける70歳以上の高齢者をたたえる「第11回ニューエルダーシチズン大賞」の表彰式が24日、東京・東銀座の読売新聞東京本社で開かれた。大賞には、108歳の後藤はつのさん(東京都墨田区)が、読売新聞社賞には、100歳の佐藤和介さん(東京都新宿区)がそれぞれ選ばれた。後藤さんはこれまでの受賞者で最高齢となる。
今年のニューエルダーシチズン大賞は、3月11日に発生した東日本大震災により、応募期間や選考などを例年より2か月間ずらして実施された。被災地に物資を送るなどの活動報告を含め、296件の応募があり、昨年の215件を大幅に上回った。
ニューエルダーシチズン大賞の後藤さんと、読売新聞社賞の佐藤さんはいずれも100歳以上で、英語で1世紀を生き抜いた人を指す「センテナリアン」の、初のダブル授賞となった。
表彰式では、ピンクのワンピース姿の後藤さんが、審査員長の日野原重明・聖路加国際病院理事長と握手を交わした。佐藤さんも、「とてもうれしく、光栄です」と喜びを語った。
自身も10月4日に100歳の誕生日を迎えた日野原さんは、「過去10回と比べ、今年は受賞者の年齢が高く、感動した。健やかに長生きするお二人の姿は、社会の良いお手本になる」と強調。審査員の毒蝮三太夫さんも、「今回ほど受賞者が神々しく見えたことはない。私は75歳だが、まだまだ若輩者だと感じた」と、惜しみない賛辞を送った。
続いて行われた懇談会では、後藤さんと佐藤さんが、長年の習慣で暗記しているお経を披露。両人とも、100歳を超えているとは思えない張りのある声で、日野原さんと毒蝮さんを驚かせた。さらに、後藤さんからは、手ぶりを交えて得意の詩吟と歌も飛び出した。佐藤さんは、「これからも大切な命に感謝し、毎日少しずつ歩んでいきたい」と、決意を新たにしていた。
審査員 (敬称略) |
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▽審査員長=日野原重明・聖路加国際病院理事長▽審査員=落合恵子(作家)、毒蝮三太夫(タレント)、長尾立子(全国老人クラブ連合会顧問)、若林之矩(前・明治学院理事長)、田中秀一(読売新聞東京本社社会保障部長) |
主催=読売新聞社 後援=厚生労働省 協力=高齢社会NGO連携協議会、全国老人クラブ連合会 |
油絵創作 個展にも意欲
大賞 後藤はつの さん 108 (東京都墨田区)

油絵、旅行、詩吟、百人一首……。108歳を迎えてなお、意欲的に毎日を楽しむ。表彰式でも背筋を伸ばし、「ありがとうございます」と笑顔を見せた。
数ある趣味の中でも油絵は、公募展で受賞するほどの腕前だ。ぼけ防止のためにと、都内の絵画教室に通い始めたのは73歳の時。以来、ほぼ毎年1点のペースで、畳1枚くらいの大型の作品を仕上げていった。
主な題材は、七五三や祭り、雪の中の通学など、古里・新潟県妙高市で過ごした子ども時代の思い出。毎年のように、全国規模の公募展「現代童画展」に出品し、83歳で新人賞、96歳で文部大臣奨励賞に輝いた。103歳の時には、初めての個展を同市で開催した。
海外旅行にも意欲を見せる。103歳でアメリカ西海岸、106歳でニューヨークを訪れ、家族とともにそれぞれ16日間、観光を楽しんだ。詩吟と百人一首もたしなみ、特に百人一首は、家族が上の句を読み上げると、暗記している下の句を元気な声で継ぐという。
ここ数年、肺炎を起こしたり、耳が遠くなったりしているが、今でも、家族が手を添えるだけで、自力で歩き、階段も上り下りする。ピンクや赤を基調とした洋服を身にまとうなど、おしゃれ心も衰えていない。
現在、油絵の創作は中断しているが、「また、皆さんに見てもらえる絵を描きたい」と語り、東京での個展の開催にも意欲を見せているという。(安田武晴)
街の再開発に飛び回る
読売新聞社賞 佐藤和介 さん 100 (東京都新宿区)

「人と接することが好き。社会とつながっていることで、元気になれる」
今年2月に100歳になった。「足腰に不安が出てきた」と言いつつも、今なお、地元の高齢者クラブや再開発組合の役員として毎日のように外出する。
新宿に移り住んだのは1948年。「当時は、家の2階から(10キロ前後離れた)多摩川の花火が見えた」という時代だった。
その後、周囲には高層ビルが林立するようになったが、自宅周辺地区はいまだに木造住宅が密集し、道路も狭い。防災上の危険も指摘され、90年代初めごろ、再開発構想が持ち上がり、自身も発起人に加わった。「景気悪化で一時はどうなるかと思ったが、5年後に完了の見通しがついた。それまで生き、安全になった街並みを見たい」と話す。
一方、会社勤めを辞めた70歳代以降は、地元の高齢者クラブにも積極的に参加。高齢者の交流の場を増やそうと、カラオケ、グラウンドゴルフなど新しい催しを企画した。元々きまじめで、役員になると、書類作りのために、80歳を超えてからワープロ教室にも通った。
人生のモットーは「常に笑顔で」。「顔がいかつくて、周りの人に怖がられやすいんでね」と笑う。(高橋圭史)
入賞者(敬称略、順不同)
有川優子(85)(鹿児島市) 障害者にちぎり絵などを指導するボランティア活動を20年以上続けている。「新老人の会」鹿児島支部事務局長もつとめる。
石川安雄(88)(宮崎県日向市) 自主サークル「高齢者健康ふれあい交流会」を主宰し、80歳代の会員約20人とともに、介護予防などに取り組む。
片桐和子(74)昭吾(75)(新潟市) 情操教育のための自主上映活動や発展途上国の子供への教育支援を行う。インドでは家なき子供のための施設を建設。
金田信子(75)(山口県宇部市) 趣味の袋物作りを夫と共に20年間続け、展示即売会の収益で寄付活動も行う。東日本大震災の被災者にも義援金を送った。
塚本義房(78)(東京都町田市) 趣味が高じ、バイオリン作りに40代後半から挑戦。独学で30本余りを作った。弦楽アンサンブルの仲間と、病院なども回る。
前田武(83)(北海道北広島市) 街中に花壇を作る地域活動のリーダー。町内の美化にとどまらず、世代を超え、住民同士の絆づくりにも貢献している。
松尾キヨ(90)(福岡市) 66歳で仕事を辞めたのを機に、英語を学ぶため、2年間米国へ留学。75歳から、地元の市民センターで英会話教室を開いている。
松崎賢治(82)(長崎県川棚町) 教員を定年退職後、郷土史の会で活動。明治半ばまでは往来が盛んだった、地元の旧平戸街道で、松の復元運動を先導した。
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