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いきいき快適生活

介護・シニア

[認知症と向き合う](19)周囲の人だって当事者

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 訪問先に、認知症で無気力になった70歳代の男性がいました。同居する妻は夫に献身的に尽くしつつも、「自分の自由な時間なんてありはしない」とこぼしながら、何もしようとしない夫を叱責する毎日。40歳代の娘たちは両親の生活が気にかかり、仕事を早々に切り上げて代わる代わる実家を訪れていました。

 この家族の中で、だれが認知症の「当事者」なのでしょうか。

 私は、認知症に苦しむ「その人」だけでなく、「認知症のことが心から離れない」周りの人も当事者なのだと思っています。

 厚生労働省は現在、認知症の人が200万人以上いると推計しています。その人のそばにいて、認知症のことが心から離れない人が仮に4人いるとすれば、認知症の当事者は1000万人以上になります。二十数年で認知症の人の数が倍近くになるという推計もあります。将来まで時間軸を伸ばして考えれば、認知症の当事者の数は、格段に増えると言っていいでしょう。

 認知症でその人が苦しみ、周りの人も大変になる。この苦悩を見るにつけ、我々の心には痛みが走ります。でも、自分自身も将来、どちらかの当事者になる可能性が高いのです。

 自分や周りの人が認知症になっても、自分らしい人生を生き続けたいと思うのは当たり前のはずです。

 視点が変われば、語る言葉が変わり、行為が変わり、そして結果が変わります。だから、認知症を語るとき、「今、どの視点で語っているのか」で、我々の未来も変わっていくはずです。もし、「明日は我が身である」と思うのなら、その時に最も大切なのは、「当事者の視点」だということになります。これが将来、認知症になるかもしれない私の意見です。 (木之下徹、「こだまクリニック」院長)

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