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世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ

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赤く燃えたぎっているが火ではないもの

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 身体の各臓器を働き別に分類する呼び名があります。

 心臓は循環器系、血管も循環器系、脳や脊髄は中枢神経系、胃や腸は消化器系、目や耳は感覚器です。

 心臓はとにかく体中に血液を送る働きを持つ臓器。器官というか、いや機関車みたいですから「機関」でしょうか。

 そういう心臓が効率よく働くように、私はほぼ毎日手術をさせていただいております。

 血液を一定量、全身に送り続ける機械的な心臓ですが、この理解はあまりにも単純な気もします。確かにそう見えます。いやそうとしか見えない。そんなふうに頑張っている心臓は気丈でけなげでもありますが、休まずにずっと動き続けるしくみについては神秘そのもの。

 いったいどういう仕組みで動き続けているのか。エネルギーの原資はすべて酸素と考えられています。こういった「機関」を、心臓の筋肉の細胞にある遺伝子を使って人工的に造れるのであれば、電力不足などエネルギー問題は一気に解決するかもしれません。

 身体は器官の寄せ集めで成り立つ機関。デカルトの生物機械論の考え方ですが、各臓器は本当に見た目の働きだけを持っているだけなのでしょうか? これも古くから問いかけられてきた疑問です。

心臓は「こころの臓器」

 例えば、心臓は物事を記憶したり、考えたり、何かを察知したり、そういう働きは全くしないものなのか? 近年、心臓からもホルモンが血液中に放出され、腎臓の働きに影響を与えているということがわかりました。そんなにすごい働きではありませんが。

 他にはないのでしょうか?

 私は、少なくとも心臓は、やはり何かを感じることができる臓器ではないか、と確信しています。心臓と毎日対面している私の意見です。

 心臓の「心」は言うまでもなく「こころ」。心臓は「こころの臓器」と書きます。人は「こころ」という言葉を使い、感情の源、あるいは芯の部分を表してきたように思います。時に心は意のままにならない、理性で抑えきれなくなる、自分とは別個のものであることもあります。そんな「こころ」が宿る部分が心臓だと誰もが考えてきたわけです。

 「こころ」をひとつの臓器を考えてみるとその働きはたくさんあります。

 人の境遇に共感し、「こころ」と「こころ」が共鳴する。これは、何らかの波動エネルギーが伝達されて、複数の「こころ」が共振する結果なのでしょうか?

 「胸キュン」機能も忘れてはなりません(これは老化すると弱まる!?)。

 他にもさまざまな機能があるのでしょうが、こういった「外からの情報に反応する」機能が充実しているところを見ると、「こころ」は感覚器に分類すべきかも知れません。

 しかし、医学では循環器。ただのポンプ。いや、そんなわけはありません。やっぱり「こころ」が宿る場所です。そしていろいろな出来事、悲しみや喜びを感じ取る臓器でもあるはずです。

手術で治せるのは心臓の一部

 そんな心臓と、毎日、向き合っています。

 心臓手術は起死回生の手術といえるかも知れません。ですが、冠動脈に血流が増え、心臓弁の逆流が止まって、そんな手術の成果だけが心臓を元気にするのでしょうか。

 「ごくごく一部の機能を修復したに過ぎないのでは?」。手術でいつも感じています。

 熱く燃えたぎっているが火ではないもの、それは何だ? トゥーランドットがカラフに問いかける難問です。

 答えは「血潮」。

 心臓はそんな血潮の製造工場であり、全身への配送センターです。これだけでもただのポンプではありません。どこまでも偉大で荘厳なまでに多機能な心臓。畏敬の念に包まれて、そんな心臓様に対面する毎日です。

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南淵明宏ブログ_顔87_87替

南淵明宏(なぶち・あきひろ)

1958年大阪生まれ。大崎病院東京ハートセンター(東京都品川区)のセンター長。心拍動下(オフポンプ)冠状動脈バイバス手術のスペシャリストとして年間200例以上を執刀する心臓外科医。

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1件 のコメント

ありがとうございました!

ちぃ

私の大切な人が南淵先生に心臓の手術をしていただきました!Hさんの命を救っていただき、本当にありがとうございました!まさか彼が心臓の手術を受けるこ...

私の大切な人が南淵先生に心臓の手術をしていただきました!
Hさんの命を救っていただき、本当にありがとうございました!
まさか彼が心臓の手術を受けることになるだなんて思いもしなかったので、初めてその話を聞かされた時は泣いてしまいましたが、無事に生きて帰ってきてくれる事を静岡から祈っていました。
この度は本当にありがとうございました!



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