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基調講演(4)私が作ったHBMという言葉…虎の門病院・高野利実さん

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 私が研修医の頃につくった言葉で、エビデンスをヒューマンに替えて、「人間性に基づく医療(HBM)」としました。医療とは何か、何に基づいて行われ、何のためにあるのか。これらは究極の問いであり、医者になってからずっと考えてきました。

 2400年前のギリシャの医師、ヒポクラテスの神への誓いの言葉が伝わっています。「私は、自分の能力と判断に従い、患者の利益となると考える養生法を取る」。内容はともかく、2400年前の人が、理念と根拠と目的を明確にしていたということが驚くべきことだと思います。

 一方、理念も根拠も目的もないような前近代的医療が行われていた時代があり、今もそういう医療が行われているところがあるかもしれません。

 その反省からEBM(エビデンスに基づく医療)が出てきました。前近代的医療から脱却して近代化を図るための概念です。

 根拠を共有しましょう、治療を標準化しましょう、という理念で、客観的なエビデンスを根拠にし、できるだけ多くの人が平均として幸せになれるような「最大多数の最大幸福」を目指す考え方です。

 EBMも非常に大事な考え方ですが、さらに先を見据えて、私が勝手に作った言葉がHBMです。人間性に基づく医療、あるいは、人間の人間による人間のための医療、とも言っています。人間中心の医療を理念とし、エビデンスと価値観に根差した人間としての語り合いを根拠とします。目的としては、最大多数の最大幸福を超えて、一人ひとりの人間の、その人なりの幸福を目指します。

 今日、お伝えしたかったことをまとめます。治療方針の決定でもっとも重要なのは一人ひとりの価値観です。その価値観に基づいて治療目標を持ち、リスクとベネフィットを判断してほしい。エビデンスという共通言語で語り合ってほしい。価値観に基づいて、自分の受けるべき治療を考えてほしいということです。

パッチ・アダムス医師の言葉

 最後に、一人の人物を紹介したい。パッチ・アダムスという医師です。ロビン・ウィリアムスが彼を演じて映画になりました。壮大な夢を持つ破天荒な医師で、来日される度に、いつもお会いしています。とても素敵なおじさんです。最後に彼の言葉を紹介して終わりにしたいと思います。

 健康とは、「病気でないこと」ではない。
 病気がなくても幸せでなければ健康ではないし、
 病気があっても幸せであれば健康だといえる。
 幸せになろうと努力すれば、
 誰でも健康になれるのである。

 以上を凝縮した1行が、
 Health is based on happiness.
 (健康は幸福の上に成り立つ)

 医療というのは、病気を治せないとしても、患者さんに幸せをもたらすべきものです。それが、本当の健康をもたらす本当の医療です。治せない病気に対して、医療のすべきことはまだまだたくさんあります。(つづく)

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