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基調講演(3)「がん難民」という誤ったとらえ方…虎の門病院・高野利実さん

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 四つ目のキーワードは、「がん難民」という言葉です。

 ある医師は「これ以上、治療法がありませんといわれて、相談に来る患者さんのことだ」といっています。さらに、「使える薬があるうちは、まだ希望がある。がん難民を救うためには、承認されていない薬でも、また、どんな方法でも入手して、それを提供している。それで、がん難民を救うのです」といっています。これは本当でしょうか。

 そもそも、がん難民は最近になって登場してきました。振り返ってみると、抗がん剤は20世紀半ばに登場した薬です。それがない時代には、がん難民などいなかったはずです。抗がん剤が足りないからがん難民が生まれたのではなくて、抗がん剤ができたから、がん難民が生まれたという方が正しい認識です。

 治療を提供すれば、がん難民を救える、がん難民がなくなると考えるのは間違いです。がん難民が本当に求めているのは、そういう見せかけの希望ではなくて、本当の希望なのです。希望、安心、幸福です。残念ながら今の医療がそれを提供できていないということが最大の問題なのだと思います。

 がんと向き合う患者さんに対して医療ができることは山ほどあります。ただ、できることがあるから、すべてやればいいということではなくて、数多くある選択肢の中から治療目標のために最適な治療法を選ぶことが重要です。

患者さんにすべき最も重要な医療は、緩和ケア

 患者さんにすべき最も重要な医療は、緩和ケアです。抗がん剤治療を続けることにだけ希望があって、緩和ケアは絶望の医療だと思われがちですが、本当は、緩和ケアこそが、希望にあふれた医療です。無限の可能性があります。

 皆さんもご存じのことわざがあります。「(おぼ)れる者は(わら)をもつかむ」。これに当てはめて考えると、溺れる者というのはがん難民のこと、藁というのは見せかけの希望のことです。

 がん患者さんは確かに非常に大変な思いをされていて、荒海の中にいるというのは事実だと思います。でも、決して溺れているわけではありません。

 目標に向かって、自分なりのペースで、泳いでいけばよいのです。医療者は、そんな患者さんに寄り添って、できる限りのサポートをします。溺れているように思いこませる社会の風潮に惑わされることなく、ぜひ、自分のペースで泳いでいってほしい。これが今日、伝えたいことです。(つづく)

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