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基調講演(1)治らない病気と向き合う…虎の門病院・高野利実さん

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 「がんの再発・転移と向き合う」をテーマに、医療ルネサンス名古屋フォーラムが9月4日、名古屋市中区のナディアパーク・デザインホールで開催されました。虎の門病院(東京都港区)の臨床腫瘍科部長・高野利実さんが、「がんとともに生きるための五つのキーワード」と題して基調講演。続いて、名古屋市立大学病院化学療法部長の小松弘和さんと対談し、がんとの向き合い方を分かりやすく説明しました。

 フォーラムの詳しい内容をご紹介します。最初は、高野さんの基調講演です。

虎の門病院臨床腫瘍科部長 高野利実(たかの・としみ)さん
 1972年東京都生まれ。98年東京大学医学部卒。腫瘍内科医を志し、東京大学付属病院内科、放射線科で研修後、東京共済病院呼吸器科で、乳がん、肺がんの薬物治療を担当。国立がんセンター中央病院内科レジデントを経て、2005年に東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年から帝京大学病院腫瘍内科講師、10年から現職。専門は、乳がん、消化器がん、肺がんを中心とした悪性腫瘍の薬物療法と緩和ケア。がん薬物療法専門医会代表。
※高野さんのホームページはhttp://homepage2.nifty.com/toshimitakano/

治療目標、治療方針の決定に不可欠

 本日のフォーラム全体のテーマは「がんの再発・転移と向き合う」です。再発がんとは、手術などの初期治療を受けたあとに、また、がんが出てきてしまうことです。局所再発といって、一度手術した場所にもう一回出てきたのなら、その部分をもう一回切れば治ることが多いのですが、今日お話しするのは遠隔再発です。最初に出たがん、たとえば乳がんが乳房に出て、手術をして治ったけれども、肝臓とか肺に行ってしまう。そういったことを遠隔再発といいます。

 転移がんとは、遠隔再発をきたしたがんのほか、最初に見つかったときから、遠隔転移が広がっているがんのことを指します。進行がんという言い方をすることもあります。

 再発がん、転移がんでは、多くの場合、がんを体から完全になくすことは困難です。私がここで想定しているのは、胃がん、乳がんのような固形がんです。基調講演のあと、名古屋市立大学病院の小松弘和先生と対談をしますが、小松先生が主に担当されている血液がんでは、再発しても治癒できるケースがあり、対談の時に補足的にご説明いただきます。

 今日の全体テーマは言い換えると、「治らない病気といかに向き合うか」ということになります。

 「がんとともに生きるための五つのキーワード」の一つ目は治療目標です。

 この治療目標というのは、患者さんが自分の価値観に基づいて決めるものであり、幸福、安心、希望につながるものです。たとえば娘が近く結婚するので、その花嫁姿を見るまでは頑張りたい。あるいは、髪の毛が抜けてしまうような治療を受けるぐらいであれば、命が短くてもいいと、色々な思いを抱えた人がいるわけで、治療目標というのは個人ごとに異なってきます。

 治療目標がなぜ必要か。治療方針を決めるときには、治療目標が不可欠です。治療目標を設定して、それを患者さん、家族、医療者が共有して話し合う。そのうえで一番いい治療法が何なのかを決める必要があります。ところが、治療目標がわからないまま、何のためだかわからない治療が行われているケースが多々あるのが現状です。

 もうひとつ、治療目標がなければ、治療効果の判定ができません。治療が効くとは、言い方を変えると治療目標に近づくことです。患者さん自身がその目標に近づいているという実感があるかどうかが一番重要です。

 治療が人生のすべてだと思い込んでしまう患者さんが多いのですが、本当にそうでしょうか。そもそも治療というのは、病気への向き合い方の一部分に過ぎません。また、病気というのは、人生のすべてではなく、大きな人生の中の一部分です。あくまで一部なのだという認識が必要です。治療目標を考える前に、より大きな人生、生き方を考えてほしいと思います。(つづく)

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