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世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ

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テレビは何を伝えているの?

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 あるテレビ局で、日本の次期戦闘機の選定作業が3年も遅れている、というニュースをやっていました。テレビ局によると、日本周辺の空は日増しに緊張感が増しているそうです。

 その根拠として、中国がレーダーにひっかからない「ステルス」戦闘機を開発していると紹介され、映像が映し出されました。次にロシアの爆撃機が日本周辺を2回も旋回したという話が紹介され、大型のプロペラ機が空中で燃料を補給しているような映像が映し出されました。9月26日朝のことです。全国でこのニュースをご覧になられた方も多いと思います。

 このテレビ局が我々に与えようとしている情報は何なのでしょう? 中国はこれまで全く戦闘機を開発してこなかったし、ロシアの爆撃機も日本の周辺に飛来することは一切なかったのでしょうか? まるで隣国が相伴ってこれまでの軍事行動を急に変えたと、あすにもどこかの国から戦争がしかけられるかもと、不安をあおりたてているように感じました。

 次期戦闘機の候補としてあるアメリカで開発されたF35という「製品」が紹介されていました。1機の値段はものすごいものです。予算が相当なものになる、との懸念を報じていましたが、他にも候補に挙がっているヨーロッパ製のユーロファイターの価格が半分以下だという事実には触れられませんでした。

 この報道では、新型の戦闘機の生産に日本の企業がどれぐらい関与できるのか、アメリカの製品を採用しなければ外交上の問題になるのではないか、との指摘もありました。大事なのは、この点かもしれませんね。

 同じテレビ局が前の夜にやっていた番組で、ジョセフ・シュンペーターという、19世紀末から20世紀初頭に活躍した政治学者の理論が解説されていました。

 戦争が起こりやすい状況として、(1)戦争を生業とする階級が台頭する状況(2)強い軍隊を所有してしまう状況……と分析しています。この理論で豊臣秀吉の朝鮮出兵を説明しようとしていました。

 先の報道では防衛省の広報担当の人物がインタビューに答えて、日本周辺の緊張感が非常に高まっていると発言していました。F35は滑走路を必要とせず、垂直離着陸が可能ということです。F36という戦闘機はまだ実用化していませんが、さらに進んで無人の戦闘機だということです。

 この国を守る安全保障の大切さは重々承知しています。隣国の動きに機敏に対応することは、その中でもきっと重要なことでしょう。

 ですが、機敏な対応が行き過ぎて、気がついたら戦争を生業とする階級が台頭している状況だった、強い軍隊を所有してしまう状況だった、ということはどうか避けてほしいと願います。

 シュンペーターの理論が的中しないことを祈るばかりです。

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南淵明宏ブログ_顔87_87替

南淵明宏(なぶち・あきひろ)

1958年大阪生まれ。大崎病院東京ハートセンター(東京都品川区)のセンター長。心拍動下(オフポンプ)冠状動脈バイバス手術のスペシャリストとして年間200例以上を執刀する心臓外科医。

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1件 のコメント

<報道の自由>

mizuho

日本は米国の屑鉄のような使い物にならない玩具を買わされてきて、今後も同様であるとおもいます。危惧するような事はないとは断言はできませんが米国に守...

日本は米国の屑鉄のような使い物にならない玩具を買わされてきて、今後も同様であるとおもいます。
危惧するような事はないとは断言はできませんが米国に守ってもらっているのですからそれなりに防衛費の中で購入するしかないでしょう。
「モチツモタレツ」で米国に阿{おもね}る以外ない。
日本が、軍事面で列強の国々と同等になることなど稀有であり、誰しも望んでいませんし、煽って煽動しているとは思われません。
日本が或る意味平和惚けしているので警鐘も含めて放送されたのでは?

隣国に対する防衛は至極当然のことですが、懸念するようなことは無いとはいえません。併し表舞台に立つのは米国です。
未来永劫続くわけではありませんが、まかり間違っても日本が軍事面で台頭することは無いと確信します。なぜか?それは先の大戦で軍人が政治に関与し何百万という尊い命を犠牲にしていまった経緯があるからです。

日本には軍隊はないです。自衛隊は軍隊のようで軍隊ではない。。徴兵もないです。そういう国家にしたのは米国です。ですから米国に守る責務がある。
でも米国も世界の警察官から町のお巡りさんになって難渋している。

いずれにしても日本は国民主権ゆえ、そういう兆しがもし生まれたとしても、国民に審を問わねばなりません。

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