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外科の進歩で人は幸せになったか(3)治療後の生活 より良く

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北川雄光さん 慶応義塾大学医学部外科教授・腫瘍センター長

北川雄光さん

 消化管の病気は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、虫垂炎、()、それから一番気になる消化器のがんがあります。多くの良性の病気では外科医の仕事は少し変わってきています。例えば胃潰瘍は、以前は手術していましたが、今は薬で治る時代です。出血した場合でも、おなかは切らずに、口から入れた内視鏡を使いクリップで出血を止め、胃に穴が開いた場合でも、腹腔鏡を使って穴をふさぐだけです。

 消化器がんの70%は手術、抗がん剤、放射線などの治療で治ります。外科医は、今まで治せなかった難治がんを治すこと、そして患者に負担をかけず、治った後の生活をより良くすることの二つが大事になりました。

 がんが怖いのは、転移して、全身に広がるからです。これまでは、がんだけでなく、転移の可能性のあるリンパ節をすべて取ることで治してきました。

 一方、すべての患者さんにそんなに大きな手術が必要なのかとも言われてきました。1990年代初頭、我々の先輩が、腹腔鏡を使って胃の一部を切る手術を世界に先駆けて開発しました。内科医も、口から内視鏡を入れ、胃の内側からがんの病巣を取る方法を開発しています。

 傷が小さいと痛みも少なく、早く歩け、腸も動く。食事も早く始まって、入院も短い。患者さんにも、医療経済上も良いのです。

 また、小さく切るためには周囲のリンパ節に転移がないか見極めなければならず、最初にがんが転移するリンパ節を調べるセンチネルリンパ節生検も行われています。

 食道がんの手術も、胸に小さな穴を開けて、胸腔鏡というカメラを胸の中に入れて行う時代になりました。

 転移した大腸がんも、抗がん剤で小さくし、手術をすることで完治する症例も出ています。外科医はすべての治療の特徴や影響を理解して、一番いいタイミングでタイムリーヒットを打つ、すなわち治癒を目指すことが求められています。

 きたがわ ゆうこう 1986年、慶応大医学部卒。2007年から現職。日本食道学会理事、日本胃癌学会理事。

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