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映画監督・砂田麻美さんインタビュー全文(3)毎日が最期に向けての日記

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がんと闘う父 娘が撮る

 ――作品作りで心がけたことは。

 「父の死は悲しい体験だったけれども、決して悲しいだけじゃありませんでした。父が死んでも関係が断絶するわけじゃない。私の“今”と地続きでつながっていると感じることができました。死は決して、無になることではない。それは希望といってもいい。作品には、そうした光のようなものを閉じこめたつもりです。その光も最後まで見てもらって初めて感じ取ってもらえるものだから、90分間楽しんでもらえるように、全体的にユーモアを失わないようにしようと思いました。父は深刻なことがあっても、最後は笑いで和ませるという人だったから、そういう意味では悲しいシーンでも救いを感じてもらえるかもしれません」

 ――普通の人の普通の死を作品にした理由は。

 「日頃、メディアでみる多くの人や事柄は何らかの強い特徴を求められますが、世の中は普通の人で成り立っているからです。モノを作る人間はその普通さに目を向けていかなくてはならないと思っています」

 ――「エンディングノート」というタイトルにしたのはなぜですか。

 「がんが分かってからの半年間、1日1日がエンディング(最期)に向けてつづられた日記のように濃厚でした。その頃を思い返すと、まるで付けていたノートをめくって1日1日の物語を読んでいるような感じがするのです。ですから家族へのメッセージをエンディングノートに書き留めるなど、死に向けて準備することが人間にとって大事だと伝えている訳ではありません」

 

私は上手に死ねるでしょうか

 ――作品のなかで、知昭さんの思いとして、「私は、上手に、死ねるでしょうか」という砂田さんのナレーションが入ります。あの言葉は知昭さんが実際話していたことですか。

 「私が、父を見ていて感じた思いです。父は自分を失わずに最後まで走りきりたいと願い、がんによって精神面に変化が出ることに不安を感じていたようでした」

 ――がんを特集しているテレビ番組を見ているシーンがありましたね。

 「テレビを見ながら、メモを取っている姿に、私は、父が自分らしく最期を終えるとはどういうことか模索している感じがしました。死に対する恐怖とか、もっと生きたいとかじゃなく、自分らしくありたいという願望を強く感じました」

 ――死やがんについて知昭さんと話したことはありますか。

 「ほとんどありません。映画のなかにも出てきますけど、『薬やめたら』という私に対して、『いやいや』と父が答える感じの会話程度でした」

 ――知昭さんは、自分らしく死ねたと思いますか。

 「最後は病状が急変し、入院することになってしまい、意識がもうろうとして混乱した時もありましたが、最終日は落ち着いていました。家族に『じゃあ、みんなありがとう』と言って逝きました。映像では入っていませんが」

 ――なぜ入れなかったのですか。

 「入れなかったのではなく、撮っていなかったのです。もし撮影していたら、作品に入れていたかもしれません。けれど、その点は何も後悔していません。父の最期の言葉は、撮影を止めても、娘として聞きたい一言だったのだと思うのです」

 「エンディングノート」は10月1日から東京・新宿ピカデリーなど全国11館で上映。

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