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いきいき快適生活

介護・シニア

[認知症と向き合う](18)「困った症状」の理由

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 認知症の人のケアにあたっている家族や職員の方から、「最近、何かと大声でどなる。静かにさせる薬を出してください」と言われることがあります。こうした訴えにどう対応したらよいのか、私は悩みます。

 こんな経験があります。長年たまっていた耳あかを取ったら、大声を出さなくなった。イライラしている時に便秘の薬を出したら、穏やかになった。ケアにあたっている職員が態度を改めたら、どならなくなった……。枚挙にいとまがありません。

 診療の中でこうした経験を重ねるうちに、困った症状の原因の多くは、実は、体調不良や薬の副作用、人間関係の悪化などによるのではないかと思うようになりました。そして、より根本的な問題として、孤独や不安、また、生きがいや誇りの喪失があることにも気付かされました。もしそうであれば、それらが解決されれば、困った症状もなくなるわけです。

 大声でどなるからには、それなりの理由があるのでしょう。静かにさせる薬を使う前に、その原因についてよく考えてみることが大切です。

 目的によっては、薬が一時的にでも有効な場合があります。そんな時、薬を飲む人が意見を言えたら、処方するか否かの判断はずっと楽になります。でも、その裏に、どなられると困る人たちがいるのも事実です。

 「誰が、誰のために」薬を望んでいるのかの見極めが重要です。ただ、現場では、この「誰のために」が揺れ動くことが多いのも事実です。

 どなる人とどなられる人の心の奥に潜む要求に挟まれて、私はその対応に深く悩むことになるのです。

 どちらの立場にせよ、明日は我が身。皆さんならどうしますか?(木之下徹、「こだまクリニック」院長)

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