ものまねタレント コロッケさん 51
一病息災
[ものまねタレント コロッケさん]難聴(4)聞こえない分 膨らむ想像
上京した翌年、20歳の時に、芸人の登竜門「お笑いスター誕生」に出場した。表情やしぐさの形態模写だったが、「似ている」を超越した芸で観客の度肝を抜いた。
沸騰したやかんに触れながら「アチョー」という声を発するブルース・リー、コミカルな顔で舞台を左右に動くちあきなおみ、早送りの野口五郎――。
「本物に何かを付け足すのがコロッケのものまね。僕は耳が聞こえないことで、どんな音なんだろう、どんな人なんだろうと想像して、頭の中で勝手に処理するクセが付いている。それがプラスに影響したんじゃないかと思います」
1987年、テレビ番組「ものまね王座決定戦」で優勝。「ものまね四天王」と呼ばれるようにもなり、重圧も感じ始めたころ、業界の大先輩にこう言われた。
「目で聴きなさい。耳で見なさい。あなたにはそれができる」
自分の右耳が聞こえないことを知らない人だった。
「『想像を膨らませなさい』ということだと受け止めたんです。そして、自分は耳が聞こえないことで、自然にそれがやれているんだと初めて意識した」
それからは肩の力が抜け、芸はますますパワーアップした。野口五郎には鼻をほじらせ、五木ひろしはロボットになった。
「想像は無限大。聞こえない分、想像を膨らませることができて幸運です」
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