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[草野仁さん]筋トレ 自分が変わる喜び

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滑らかな動きでダンベルを上げたり下げたりする草野さん。「体力に自信がつけば、気持ちにも自信が生まれます」(東京都内で)=工藤菜穂撮影

 「最初は15キロのダンベルを使っていたんですが、首の筋を痛めちゃいましてね。今は5キロのものを使っています」

 銀色に光るダンベルを軽々と握り、笑顔を見せた。優しい表情、穏やかな語り口はテレビで見るのと同じで紳士的。しかし、黒いTシャツに覆われた肉体は分厚く盛り上がっていてマッチョ。

 身長170センチ、体重80キロ・グラム、胸囲118センチ。この体を支えているのが、ほぼ毎日欠かさない自己流トレーニングだ。13年ほど前、背中のぜい肉がつまめることに気づき、「これはちゃんとした方がいい」と、自転車型トレーニングマシンを購入したのが最初だった。

 体作りは、畳の香りがする自宅の和室で行われる。まず、このマシンで40分ほど汗を流し、次に両手でダンベルを握る。寝たり、座ったり、立ったりと姿勢を変えながら、自ら考案したダンベル運動で上半身を鍛えていく。仕上げは入念な柔軟運動だ。全部やると約1時間。忙しい日でも、仕事前や帰宅後に時間を作り、30分だけでも取り組む。

 「何事も続けることが肝心ですから。続けていると、必ず『お、昨日より楽だ』『もっと、やれるな』と感じる瞬間が来るんです。続ける意欲につながっています」

 反対に、いつもより呼吸がつらくなる日も。「そんな時は無理をせず、パッとやめる勇気が大事」と助言する。

 大学卒業後に入ったNHKでは、主にスポーツの実況中継を担当。85年にフリーになってからは、クイズ番組や情報番組などの司会者として、お茶の間で広く親しまれてきた。

 温和で安定感のある司会進行役の顔を脱ぎ捨て、「肉体派」の己をテレビでさらけ出すようになったのは、還暦を過ぎたころからだ。

 バラエティー番組への出演がきっかけだったが、「何でも真剣になってしまうタイプ」で、自ら瓦5枚割りを提案して素手で割ったり、リンゴを片手で握りつぶしたり――。小型バスを一人で引っ張ったこともあった。

 「そういう姿を同世代の方にご覧いただき、あいつがやれるなら『オレも』という、心地よい刺激になれば」と笑う。

 5年ほど前、テレビの企画で、35歳以上を対象にした陸上大会「マスターズ陸上」への参加を志したことがある。練習中は100メートルを13秒台で走ったが、ケガをして出場を断念。大会を見に行くと、70~80歳代の人が美しいフォームで軽快に走っていた。その姿に心を揺さぶられた。いつか出場して、メダルを目指すのが今のひそかな夢だ。

 「何もしなければ、加齢と共に筋肉は衰えていきます。しかし、努力すればその衰えを少しは食い止められる。何歳になっても自分の思うように体を動かせれば、生活の質もそれほど落とさずに済む。一生涯続けていくつもりです」

 もうトシだから――。多くの人が、年齢を理由に新たな挑戦を遠ざけてしまうのが残念でならない。「筋トレなら1か月も続ければ、自分の変化を発見できるはず。自分の新たな可能性に気付く体験は、何にも代え難い喜びになると思いますよ」(板東玲子)

 くさの・ひとし テレビキャスター。1944年、満州(現中国東北部)生まれ。東京大学卒業後、NHKに入局。五輪の実況中継などスポーツを中心に担当。85年に退局しフリーとなった。86年から司会を務めるクイズ番組「世界ふしぎ発見!」(TBS系)は放送1200回を超えた。

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