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障害ある人の新福祉制度を議論
障害がある人に対する、新しい福祉制度が議論されているそうですね。何が課題なのかな?
難病など支援の拡大も
身体、知的、精神障害がある人たちの生活を支える福祉サービスは、現在、2006年に施行された障害者自立支援法に基づいて行われている。利用者は制度の定着とともに増え、約60万人いる。
ただ、原則として利用したサービスの1割が自己負担とされたため、「障害者の生活が苦しくなった」という批判も強い。このため、政府は13年8月までに制度を廃止することを決めている。
自立支援法に代わる「障害者総合福祉法(仮称)」の内容については、内閣府の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会で議論され、8月30日に提言がまとまった。部会は委員の大半を障害者などの当事者が占めており、障害者の意見が反映されている。
提言で注目されるのは、障害者が介護や就労支援などのサービスを利用する際、自己負担を原則無料としたことだ。食費や光熱費などを除く費用は、すべて税でまかなう。
対象となる障害の範囲も広げ、発達障害や難病などで障害者手帳を持たない人たちも利用できるようにする。
サービスの内容を障害の程度に応じて自治体が決める現行方式を改め、利用者本人が「相談支援専門員」と話し合って計画を作る方式の導入を目指す。
また、日本は国内総生産(GDP)に対する障害サービス費の比率が、経済協力開発機構(OECD)加盟32か国中18位(07年)と低い。提言は、加盟国平均並みに引き上げることを求めている。
政府はこの内容を参考に検討を進め、来年の通常国会に法案を提出する方針だ。
だが、実現には課題も多い。
自己負担をなくして支援対象を広げれば、費用の拡大は避けられないが、財源確保の見通しは立っていない。
また、厚生労働省は「介護保険のサービスを受けると1割の自己負担があるのに、障害者の負担だけゼロにするのはバランスを欠く」と難色を示している。内容がどこまで実現するかは未知数だ。(梅崎正直)
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