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医療功労賞 被災者に寄り添う受賞者たち

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山古志村で孤軍奮闘

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第33回受賞 佐藤良司(さとう・りょうじ)さん

 1984年に古里の新潟県山古志村(現・長岡市)に戻り、佐藤良司さん(65)は地域で唯一の医師として診療所で住民の健康を支え続けている。2004年10月23日の中越地震で道路が寸断され村が孤立した際は、小学校のグラウンドで負傷した住民らを手当てし、励ましながら救助を待った。

 避難先の長岡市でも、避難所の救護所で診察を続けた。仮設住宅が建設された後は、敷地内に設けられた診療所に詰めた。佐藤さんはこうした経験から、「コミュニティー(地域社会)」の重要性を強調する。長い避難生活は、被災者の心身を激しく疲弊させ、それが病気やけがの回復を遅らせる。「隣近所と話をして、新しい絆ができれば、それを励みに頑張れる」と話す。

 中越地震被災者が仮設住宅に入居する際は、元のつながりが保たれるよう、どの棟に住むか各地区単位で割り振られた。そのおかげで、佐藤さんが診療の時に「あの人の様子はどう」と周囲に尋ねると、必ず具体的な情報が得られた。「その人の変化が、家族の次にわかるのは近所の人。地域で互いに気をつけ合えたことが、その後の復興につながった」と振り返る。

 佐藤さんは、避難所では集団生活で広まりやすいインフルエンザなどの感染症を主に診た。仮設住宅に住民が移ってからは、環境の激変で生じるうつ病などの精神疾患や、孤独死に最も気をつかったという。避難所での集団生活と違い、落ち着いて将来を考えられるようになる反面、一人で悩みを抱え込む人が増えるからだ。

 そこで、佐藤さんは仮設住宅を巡回する警察官やボランティア、介護施設の職員らと共に精神疾患に関する勉強会を開き、住民の様子に気を配るよう依頼。住民らには日々の散歩などによる気分転換を呼びかけた。

 「一人で頑張ってボロボロになったら、復興も何もない。駄目だと思ったら、人に甘える。助けてくれる人が必ずいる。決して一人で抱え込まないでほしい」(長岡支局 小野卓哉)

医療功労賞 応募要項

 【国内部門】(約15人)医療過疎地、重度心身障害者施設、小児や救急、移植を始めとする各種専門医療施設など、困難を伴う環境下で15年以上活動した、原則50歳以上の人

 【海外部門】(若干名)国内を含めた医療業務歴が15年以上で、かつ海外で通算5年以上の医療活動(または10年以上の医療助成業務)に従事した原則50歳以上の日本国籍の人
*両部門とも職種は医師に限定しません

 【推薦手続き】推薦団体(個人)は推薦書に参考資料を添え、国内部門は都道府県庁の医療功労賞係へ。9月30日必着。海外部門は〒104・8325読売新聞東京本社事業開発部「医療功労賞」事務局(電話03・5159・5886)へ。10月31日必着。推薦書は国内部門は各都道府県庁に、海外部門は医療功労賞事務局にそれぞれ請求

 【賞】受賞者全員に厚生労働大臣賞、読売新聞社賞、副賞100万円ほか

 【発表】2012年3月本紙上

 医療功労賞の詳細は、ホームページ(http://event.yomiuri.co.jp/2011/iryo-40th/)に掲載されています。

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