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小児科医・浦島充佳さんインタビュー全文(1)不信感持たれた政府の情報発信

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 小児科医で、新型感染症の流行や生物テロなどの危機管理対策を研究している東京慈恵医大准教授の浦島充佳さんは、今の私たちは「原発事故の罠(わな)」に陥りやすい心理状況にあると考えています。浦島さんの言う「罠」とは何なのか、聞きました。(館林牧子)

浦島充佳(うらしま・みつよし)
 1986年、東京慈恵医大卒業後、同大で小児白血病の診療にあたる。2000年、米ハーバード大で公衆衛生学を学び、災害時医療の危機管理対策なども研究。今年7月、「放射能汚染 ほんとうの影響を考える」(化学同人)を出版。

 ――福島第一原発とチェルノブイリ原発事故の経緯を検証する本を最近、出版されました。その中で、日本政府の情報発信のまずさを指摘されています。

 浦島 本を書くにあたり、事故発生直後からの会見を読み直したのですが、表現がわかりにくく、大事な話が後から「実はこういうことでした」と発表された印象があります。

 放射性物質の拡散予測をしていたのに、公表が遅れ、避難に生かされませんでした。事故直後に原子炉がメルトダウン(炉心溶融)していたのに、発表されたのは震災から2か月たってから。しかも、国は震災翌日にメルトダウンに近い状態が起きている可能性があると認識していたことも後からわかりました。これでは、不信感を持たれて当然です。

危機管理で重要な情報提供の仕方

 ――米国で新型感染症の流行や生物テロなどの危機管理対策を学んで来られました。

 浦島 米国は、地下鉄サリン事件が徹底的に分析されるなど、テロ対策、危機管理対策の研究に熱心です。福島第一原発のことも今後研究されるでしょう。

 危機管理では、実際の対策と同じくらい、情報の提供の仕方が大事です。伝える側は悪い知らせを伝えると人びとがパニックになるのでは、と恐れます。けれども、リスクを正しく説明し、それをコントロールする準備があるんだと伝えることが大事です。パニックを恐れて、わざと難しい表現やあいまいな表現を使ったり、発表が遅れたりするのは逆効果です。

 米同時テロの時のジュリアーニ・ニューヨーク市長の対応は、うまく行った例とされています。彼が主眼に置いたことは、とにかく早くメディアに顔を出して、消防や警察が頑張っている、我々は事態をコントロールしようとしているという姿勢を見せ、人びとに安心できる印象を与えようとしたことです。福島の事故の菅首相とは対照的だったと思います。

 私は小児がんの治療に当たってきましたが、がんと伝えると親御さんは頭が真っ白になってしまいます。けれども、こういう治療があり、全力で対応します、と説明すると、少しずつ、前向きに闘おうという気持ちになってくれます。誠実に伝える、ということがカギになるのではないかと思います。

 ――特に子どもを持つ母親の間で放射線への不安が広がっています。

 浦島 政府への不信感、ネット上に氾濫する情報。広島・長崎の追跡調査では、100~200ミリシーベルトより高い放射線量の影響は明らかになりましたが、今回の事故での周辺住民の被曝(ひばく)はそれより低い。今回のレベルの放射線量での健康影響ははっきりせず、専門家の間でも意見が分かれています。心配するのは当然の成り行きだと思います。(つづく)

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