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医療部発

医療・健康・介護のコラム

なぜ、日大練馬光が丘病院撤退なのか

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日大練馬光が丘病院の引き留めをあきらめ、後継病院選びを始めている練馬区

 日本大学は、東京都練馬区にある「日大医学部付属練馬光が丘病院」(342床)について、累積赤字が90億円にもなるなどとして、開院から20年になる来年3月末で撤退する方針を明らかにした。練馬区は現在、引き継いで運営する医療機関を選ぶ作業を続けている。区議会の医療・高齢者等特別委員会が26日、この問題を討議すると聞いて、傍聴に行ってきた。

 この病院は1991年、経営破綻した医師会立病院を引き継いで開院し、以来、地域医療を担ってきた。18の診療科を持ち、とりわけ、小児救急と周産期医療の点で果たしてきた役割は大きい。小児救急部門では、日大板橋病院からの派遣医師も加え、医師20人の体制で24時間患者を受け入れ、毎年、8000人以上の子供たちの救急診療にあたっている。分娩(ぶんべん)件数は年間約500件。妊婦に病気があったり、胎児に異常があったりするなどのハイリスク分娩にも対応している。

 それが、突如、撤退するというのだ。区によると、区は、同大が30年間、病院を経営するという基本協定書を交わし、開院時や増築時に建物賃借料の免除などを行ってきた。2009年、日大から経営難を理由に撤退を打診され、協議を重ねてきた。しかし、日大が今年7月、経営の悪化を理由に来年3月で撤退すると発表。区は日大の引き留めをあきらめ、今年9月中に引き継ぎ医療機関を決めることにした。

 日大の対応は納得できない。30年間、病院経営する約束をしていたのに、「民法上、賃貸借の期限は20年を超えることはできないので契約は終了する」と主張している。赤字については、ここ数年、経営状態は好転し、今年度は黒字が見込まれるというのに、この時点での撤退は解せない。

 区は、「地域住民を混乱させないように」と極秘で日大と交渉を続け、多くの住民が、この事態を知ったのは、日大が発表した7月15日だった。区は8月1日から引き継ぎ医療機関の募集を始めている。日大の撤退期限が迫っており、急ぎたい区の事情は分かるが、住民にとっては、あまりにも考える時間が少ない。地域医療の質の低下を不安視する住民らが日大光が丘病院の存続を求める署名活動を実施中で、区長に提出する予定だ。

 26日の区議会の医療・高齢者等特別委員会には、60人ほどの住民が傍聴に訪れ、関心の高さが伝わってきた。委員会では、日大の引き留め交渉の継続を求める意見と、後継病院選びに軸足を移す区の方針に賛成する意見が出された。議員も、この事態に困惑し、的確な対策を決めかねている現状が浮き彫りになった。

 傍聴していた、ある住民は「日大光が丘病院が取ってきた手厚い小児救急の体制を後継病院が引き継げるとは思えない。区も日大も、地域住民のことを本当に考えているのだろうか。練馬区長は、日大理事長とトップ会談をして事態を解決してほしい」と訴える。

 練馬区と日大は、まず、住民の思いを聞く場を作るべきだ。住民不在のままの決定では、禍根を残しかねない。

 
 

 

坂上博 1998年1月から医療情報部。主な取材対象は、心臓病、肺がん、臓器移植、高齢者と薬の付き合い方など。趣味は、朝鮮半島情勢の観察、韓国語の習得。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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24件 のコメント

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混乱している地域住民です。

おおまま

娘が川崎病で日大光が丘に入院していました。 後遺症はないものの、退院後定期検診に行っていました。 新病院準備室に相談したところ、 カルテも残りま...

娘が川崎病で日大光が丘に入院していました。

後遺症はないものの、退院後定期検診に行っていました。

新病院準備室に相談したところ、

カルテも残ります、検査もできます、との返答。

4月になり、新病院になってから電話すると

カルテはないです、検査はできますが専門の医師はいません、との返答。

しかたなく日大板橋へ行くことにしました。

ところがそちらでは、初診扱いで特定療養費を請求される始末。

カルテはあると言ったのに?と聞くと

駿河台に保管してあるから取り寄せないといけない、の返答。

スムーズな対応してほしいです。

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医師の家族

不養生の医師

日曜無し、祝日無し、当直有りの肉体労働者です。 日程は、患者様が決めます。 家族が、顔を合わせるのは、一月に数度です。 若い医者同士の新婚さんは...

日曜無し、祝日無し、当直有りの肉体労働者です。 日程は、患者様が決めます。 家族が、顔を合わせるのは、
一月に数度です。 若い医者同士の新婚さんは、すれ違いすれ違いのさみしい毎日を余儀無くされています。 なぜ?? 簡単です。 患者様が多すぎる訳では、有りません。 医者が、足りないのです。 今回の件でも一番迷惑を受けるのは、患者様です。 自治体、大学は、何をすべきか、わからないですか? 先生の名が泣きますよ
 

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先週報道された番組の内容に驚きました。

区役所近所の住民です。

練馬区役所の近くに住む区民です。母が日大光が丘病院で大きな手術をしてお世話になり、私の子供達も骨折や喘息で小さなころから何度もお世話になっていま...

練馬区役所の近くに住む区民です。母が日大光が丘病院で大きな手術をしてお世話になり、私の子供達も骨折や喘息で小さなころから何度もお世話になっています。
病院存続の署名は知人を通じて署名用紙をお預かりし、家族全員、ご近所、親戚にも協力をお願いしました。先週、ある民放局で日大光が丘病院の問題が放送されました。
私は、これまで撤退の理由は90億円にも上る赤字が原因で、このままでは日本大学全体に深刻な影響を及ぼすため、大学を守るためにやむなく撤退すると聞いていました。
ところが先週の番組では、練馬区が保証金として日大から預かった50億円を返還しないことが撤退の本当の原因として放送されていました。
日大光が丘病院の受付に置いてある閉院のお知らせにはそんなことは一切書いてありませんでした。50億円が原因ならなぜ日大の方々は、そのようにはっきり言って下さらなかったのでしょうか?
日大病院を残すためなら、練馬区はすぐにでも50億円をお返しするべきだと考える区民はたくさんいたと思います。
署名用紙を回してくれた知人に聞いたところ、存続派の区議さんや区民の会のホームページに医学部の先生の手記が掲載されており、その内容が先週放送された番組と同じであると教えられました。
50億円が撤退の本当の理由であるなら、なぜ署名集めを頑張っている私たち患者や家族に教えて頂けなかったのでしょうか?
50億円は大変大きな金額ですが、区民の命を考えればなんとしても工面しなくてはならなかったと思います。
私たちの知らないところで、私たちの命を材料に、密室の交渉が行われていたのかと思うと残念でなりません。

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