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「第3号被保険者」見直し論議、なぜ?

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 女性の年金に関してよく話題になる「第3号被保険者」って、どんな制度? 何か問題があるの?

「専業主婦を優遇」と批判

作図・デザイン課 遠藤牧子

 国内の20歳以上60歳未満の人は、国民年金への加入が義務づけられている。このうち、サラリーマン世帯の専業主婦などが「第3号被保険者」とされ、自分で保険料を負担せずに、老後は基礎年金を受け取れる。「専業主婦を優遇しすぎ」などの批判もある制度で、政府は6月にまとめた「社会保障・税一体改革案」で、見直しを打ち出した。

 3号の対象は、配偶者が厚生年金や共済年金の加入者で、本人の年収が130万円未満の人。全国に1021万人いて、99%が女性だ。

 3号の分の保険料は、厚生年金や共済年金の加入者全体で負担する。厚生年金の保険料率は一律で、3号の夫だけでなく、共働きや単身者も肩代わりしている。一方、夫が自営業者などであれば、本人の収入にかかわらず国民年金の保険料(今年度は月1万5020円)を払う必要がある。こうした点が不公平感を生んでいる。また、3号の対象範囲に年収を抑えるパート主婦も多く、「女性の就労を妨げる」との指摘もある。

 専業主婦の国民年金切り替え忘れ問題も、この制度が発端。3号を外れたのに手続きせず、保険料を払わなかった人の救済を巡る混乱だった。

 3号制度が導入されたのは1986年度。それまでサラリーマン世帯の専業主婦は任意加入で、加入せずに障害を負ったり離婚したりすると、無年金になる問題があった。そこで、専業主婦も自分の年金を確保できるよう、加入を義務化。ただ、「収入がない」として、負担は免除した。「女性は結婚すれば家庭に入るもの」という時代には評価されたが、共働きの増加とともに、批判が高まってきた。

 見直し案として、3号や配偶者に新たな負担を求めたり、年金を減額したりする案が出ているが、反発も強い。政府は当面、厚生年金の加入対象を広げて主婦パートを吸収し、3号を減らす考えだが、これも経済界の抵抗が必至だ。

 今でも、育児や介護のために仕事を辞めざるを得ない女性は多く、見直しには慎重論も根強い。女性の就労環境の整備と合わせて、検討する必要がある。(林真奈美)

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