こころ元気塾
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[ペットロス]仲間と悲しみ共有
大切なペットを失い、飼い主が悲しみに暮れることをペットロスと呼ぶ。悲しみは少しずつ癒やされていくのが普通だが、なかなか立ち直れず、うつや食欲不振などで体調を崩す人もいる。どうすれば克服できるのだろうか。(竹内芳朗)
別れを受け止め感謝へ
茨城県常陸大宮市の主婦、小口令子さん(50)は6年前、生後5日のトイプードル4匹を一度に失った。家族が留守にしていた時、母犬がかみ殺した。
その日、4匹は動物病院で尾を切っていた。トイプードルの尾は自然のままではやや長く、適当な長さに切ることもある。病院側は「尾を短くした影響で母犬が混乱したのかもしれないが、はっきりした理由は分からない」と説明した。
誕生を心待ちにし、ようやく生まれた喜びのさなかの死別。母犬が子犬たちを捜して家の中を駆け回る姿が痛々しかった。小口さんは「尾を切らなければ」「留守にしていなければ」と自らを責め、悲しむばかりだった。
ペットロスの電話相談などに取り組む民間団体「日本ペットロス協会」(川崎市)の代表で、心理カウンセラーの吉田千史さん(58)は「ペットロスの原因は、長年連れ添った動物の寿命による死別のほか、動物の事故死、行方不明、盗難など、様々な形がある。一般にペットが日常生活に深く入り込むほど別れがつらくなるが、たとえ一緒に過ごした時間が短くても、愛情が深ければペットロスは起こる」と話す。
小口さんの心の支えになったのは、犬好きの友人たちだった。何人もが小口さんの話に耳を傾け、「あなたのせいじゃない」と優しく声をかけてくれた。すると気持ちが次第に和らいだ。
「親しいペット仲間を作ることは、ペットロスの重症化防止のポイントの一つ。互いにペットを失った時に悲しみを共有し、慰め合うなどして立ち直るきっかけをつかめる」と吉田さん。▽ペットは人より長生きできないと普段から自覚する▽ペットに過度に依存せず、他の趣味を持つ――なども大切という。
吉田さんと交流が深く、同じくペットロスの電話相談を受け付ける「伴侶動物との別れを癒す会」(神奈川)のカタリナ房子さんは5月、13年間一緒に暮らしたゴールデンレトリバーを失った。老衰に病気が重なり、動物病院に入院して2日で死を迎えた。
「最期は自宅で看取ってあげるね」といつも語りかけていたが、約束を果たせなかった。それがつらかった。だが「私に世話で苦労をかけまいと急いで逝ったんだわ。優しい性格だったから」と考え、乗り越えた。
カタリナさんは言う。
「死別の苦しみや悲しみは、その対象が人であっても動物であっても同じ。そこから逃げる必要はないし、思い切り泣いてもいい。でも、いつか別れを前向きにとらえ、その動物と出会ったことに感謝できれば、気持ちが楽になる」
小口さんはその後、吉田さんの下でペットロスについて学び、2008年にペットロス・カウンセラー(民間資格)となった。自宅で無料電話相談に応じる。あの母犬は、また子犬を産んだ。親子4匹が元気に暮らしている。
「周りにペットロスに苦しむ人がいたら、『たかがペット』と思わず、親身になって話を聞いてあげてほしい。そういう人の存在はとても心強いものだから」と話す。
ペットロス電話相談窓口 |
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日本ペットロス協会「ペットロス110番」((電)044・966・0445 受け付けは平日午前11時~午後7時)※まず、この電話で相談日時の予約を。面談も可。相談料は50分5000円。 |
伴侶動物との別れを癒す会((電)0467・83・4890午前10時~午後2時)※無料 |
小口令子さん((電)0295・57・3929 午後9時まで)※無料 |
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