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はつらつ健康指南

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どうなる栄養成分表示(下)誤解招く数字のマジック

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ナトリウム2.7グラム→食塩換算6.9グラムに

生活習慣病の予防や改善のため、一般向けの講座で栄養表示の活用法を伝える蒲池さん(左)(東京都豊島区の女子栄養大学栄養クリニックで)

 現在の健康増進法では、食品に「塩分控えめ」など栄養に関する表示をする場合にのみ、〈1〉熱量(エネルギー)〈2〉たんぱく質〈3〉脂質〈4〉炭水化物〈5〉ナトリウム――の5項目の含有量をこの順番で表示しなければならないことになっている。

 消費者庁では、この順番を見直し、ナトリウムを2番目に上げることを検討している。日本人は、世界的にみてナトリウムの摂取量が多く、心疾患のリスクと関係しているとのデータがあるからだ。

 「ナトリウム表示には、食塩の量だと誤解を招きやすいという問題があります」

 東京都豊島区の女子栄養大栄養クリニックの教授、蒲池桂子さんは、生活習慣病予防の講座などで注意を呼びかけている。

 食塩は、ナトリウムを主成分とする調味料で、ナトリウムと同じではない。生活習慣病予防のために、日本では食塩の摂取量を抑えるように指導している。家庭で調理する場合、ナトリウムの量は計算しにくいからだ。日本人の食事摂取基準によると、1日の塩分(食塩)の目標量は男性9グラム未満、女性7・5グラム未満。

 ナトリウム量から、食塩の量を知るには計算が必要。計算式は「ナトリウム量×2・54」。たとえば、あるカップ麺のナトリウムは2・7グラム。食塩は、2・54倍の6・9グラム。このカップ麺を食べると、1日の目標量のうち、かなりの量を取ってしまうことがわかる。

 ナトリウム量が食塩量と同じだと誤解すると、食塩の過剰摂取につながる恐れがある。このため、医師らでつくるNPO法人の日本高血圧学会は今月15日、消費者庁に対し、ナトリウムだけでなく食塩相当量の表示も義務付けることを要望した。

 こうした数字のマジックはほかにもある。「100グラムあたり400キロ・カロリー」と、「1食分(10グラム)あたり50キロ・カロリー」を比べると、後者の方が少なく見えるので、業者は後者のような表示をする傾向がある。栄養成分表示をいかにわかりやすくするかは検討課題だ。

 米国では、すべての栄養成分が、1人が一度に消費する平均的な分量を基に表示されている。さらに、この1人分を口にした際、1日の目安量の何%を摂取することになるのかも示している。

 イギリスでは、脂肪や糖分、塩分など、取り過ぎると良くない栄養素が多く含まれていると赤、中程度だと黄色、少ないと緑色で栄養成分を表示する。

 食品表示に詳しい日本生活協同組合連合会の鬼武(おにたけ)一夫さんは、「表示を消費者に役立つようにするには、分かりやすくする工夫が欠かせない」と話している。(竹之内知宣、岡安大地)

日本人の食事摂取基準
 健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的として、厚生労働省が示すエネルギーや各栄養素の摂取量の基準。保健所の栄養指導などで使われる。食塩や脂質については、取り過ぎを防ぐための「目標量」が設定されている。
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