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赤ちゃんを亡くして…悲しみ、私だけじゃない

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 赤ちゃんを亡くした女性は、深い悲しみの底に突き落とされる。神奈川県立こども医療センター(横浜市)は、心のケアに役立てようと、胎児や赤ちゃんの死について、母親らが体験を語り合う場を用意している。(加納昭彦)

体験語り合うケアの場

亡くなった長男の手形と足形をもつA子さん。「スタッフの方の温かい言葉に何度も助けられた」と話す(神奈川県立こども医療センターで)

 「悲しみは波があるけど、少しずつ回復しています」

 6月11日、かながわ県民センター(同市)で開かれた「わたぼうしの会」。同県相模原市のA子さん(32)は、会場に集った女性ら17人に静かに語り始めた。

 A子さんは2010年4月、同医療センターで長男を出産。長男は肋骨(ろっこつ)の異常で肺がうまく機能せず、自発呼吸ができなかった。翌日、亡くなった。

 その後、ベビーカーで赤ちゃんを連れた家族を目にするのがつらく、外出を極力減らすようになった。レストランで、近くから赤ちゃんの声が聞こえると席を離れた。「なぜ、自分だけこんな悲しい目に遭うのか」

 同会に初めて参加したのは昨年10月。長男の死から半年が過ぎていた。自己紹介の後、参加している約20人の女性や家族に、今の気持ちをそのまま吐露した。

 一人ひとりの体験談にも耳を傾けた。涙で言葉の続かない人もいた。「赤ちゃんを亡くしたのは自分だけではない」と気付かされた。短い時間でも、ベッドで抱きしめるなど親子の時間もあった。「病気を乗り越え、生きて生まれてくれた。頑張ってくれたんだな」と感謝の気持ちも芽生えた。

 「つらさをしまい込むよりも時々、外に出した方が心は楽。悲しみを乗り越えようとせず、一生付き合おうと思います」と話す。

 わたぼうしの会がスタートしたのは1997年。赤ちゃんを亡くした母親のために何かできないかと、「保健福祉相談室」の保健師らが手弁当で始めた。年3回開催で、昨年からセンターの事業に位置づけられた。特徴の一つに、医師は参加できないことがある。

 相談室の担当者は「医師への遠慮で、言いたいことを話せなくなってしまうのを防ぐため」と説明する。 同県藤沢市のB美さん(35)も参加者の一人。妊娠16週目だった昨年5月に受けた超音波検査で、医師に「赤ちゃんの心音が確認できない」と告げられた。翌月、人工死産。赤ちゃんの泣き声を聞くのもつらい日が続いた。転機は、同年10月に参加した同会だった。

 「赤ちゃんを流産した経験は普段、人に話せない。でも、ここだと安心して気持ちをさらけ出せるし、人の話を聞くと、心が救われる気がする」とB美さん。

 『赤ちゃんを亡くした女性への看護』の編者で、聖路加国際病院の医師、山中美智子さんは「赤ちゃんを亡くしたという共通の体験について、今の正直な気持ちを安心して語り合えることが、心のケアにつながる」と指摘する。

 ただ、こうした場は全国各地にあるわけではない。

 淀川キリスト教病院周産期母子センター長の和田浩さんが昨年、総合周産期施設など203施設(回答率63%)を対象に実施したアンケートによると、赤ちゃんを亡くした女性が退院した後のケアについて、「各地の自助グループを紹介」は24施設(19%)、「病院独自のサポートグループなどがある」は5施設(4%)だった。

 和田さんは「こうした支援は効果的だが、人手や時間、財源など病院側に大きな負担がかかることもあり、数は十分ではない。スタッフの負担を軽減する仕組みなど国レベルでの検討が望まれる」と話す。

胎児や赤ちゃんの死
 厚生労働省の人口動態統計では、死産証書が必要な妊娠12週以降を死産、出産から生後1週未満までを早期新生児死亡とする。毎年100万人以上の赤ちゃんが誕生する一方、死産は約2万7000人、早期新生児死亡は約880人(2010年)。死産を含む流産は全妊婦の15%が経験するとされる。
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