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日野原重明さん 特別講演

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(2)被災者の経験、日本の役に立つ

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 それと同じように、このたびの東北の大震災と津波と原子力発電所の放射能に悩まされた経験をしていない人は、その悩みや苦しみが分からないかもしれません。ここに来られたみなさんは、震災と原子力発電所の事故で避難してこられました。そのみなさんの経験が、日本のためにとても役に立つのです。不幸な経験ではあったけれども、これから先の日本は、再び震災に遭遇するようなことがあれば、皆さんが耐えたその経験が力になるのです。つらい経験をした人だけが、つらい立場の人を励ますことができるのです。皆さんが受けた苦難は、必ず将来に生かされることがあるということを覚えていてほしいと思います。

 苦難に耐えるということはどういうことかというと、雪が降って笹の葉に積もると、笹の葉は雪のために葉を垂れますね。「冬きたりなば 春遠からじ」という言葉があります。雪の重みに耐えている笹の葉は、春が近づいてだんだんと雪が溶けてくるのをじっと待っているのです。しなった笹の心は、ひたすら耐える心でしょう。耐える中で、雪がだんだん溶けてきて、頭をもち上げる日が必ずくるのです。みなさんの苦難が解決される日が必ずあると信じて、今の苦難に耐えていただきたいと思います。

 私は長い間、医学生や看護師の教育に携わってきました。

 私はいつも冗談めかして若い彼らにこう言います。「君たちは死なない程度の病気をしたほうがいいですよ」と。苦しいこと、つらいことに耐えた経験があると、患者さんの苦しさやつらさがわかる良い医師やよい看護師になれるからです。

 皆さんは、不安に耐えて、ここに避難してこられました。
何年避難をつづければいいのかまだ分かっていないのです。放射能の害がまだ十分に分かってないからです。

 私はチェルノブイリ原発事故の視察に行きました。子供は放射能の害を受けやすいので子供にどういう病気が出るか10年間調べる調査に加わったのです。

 すると、放射能を受けた子供は、そうでない子供の1.8倍の割合で甲状腺のがんになることがわかりました。放射能を受けなくても、甲状腺のがんになったり白血病になったりはするのですが、放射能を受けた子供は1.8倍高いということが分かったのです。

 甲状腺がんになっても、検診で早く発見して手術をすれば治ります。白血病は、昔は治らなかったのですが、今は骨髄を移植すれば、あるいは赤ちゃんが生まれた時の母親の血液(臍帯血)を移植しますと治ります。子供の白血病はきちんと治療を受ければ治すことができます。

 広島の原爆ではそういうことが分からなかったから、被爆した人は骨髄で白血球を作ることができず生き延びることができなかったのですが、今は、早く発見すれば白血病は治すことができるようになりました。(つづく)

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