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世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ

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心臓外科医ならではの七夕

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 「ぱぱがはやくげんきになりますように」

 これは、七夕の日に手術を受けた40歳の男性のお嬢さんが、短冊に込めたお願いです。手術は大動脈を人工血管に交換し、心臓の弁を人工弁に交換するものでした。

 なかなかのプレッシャーです。失敗は許されません。

 成功したつもりでも、心臓外科手術では何が起こるかわかりません。脳裏にかわいいお嬢さんの顔が浮かんできます。さながら左門豊作と対戦する星飛雄馬…

 何とか手術は成功しました。元気で新潟にお帰りいただけるでしょう。

 心臓の手術中、ものすごいプレッシャーで、息が詰まりそうになることがあります。このプレッシャーこそ自分のエネルギー源です。そう言い聞かせ、これまで多くの難手術に挑んできました。

 そんな自分を、実は満喫しています。こんなプレッシャーは、この世で心臓外科医しか感じることができないはずですから。

 また、重症患者さんが来院されました。よその病院で一度、バイパス手術したのですが、つないだ血管がすぐにダメになってこちらに依頼がありました。腎不全で血液透析中の患者さんです。血管が石の様になっており、細く、もろく、また二回目の手術なので心臓が周りの臓器とベッタリくっついています。

 手術に入る前、ご家族に宣言しました。

 「とっても大変そうな手術ですが頑張ります。うまくいきますよ。僕はそういうのに本当に強いですから」

 これは口から出まかせです。そうやって自分を追い込むのです。

 追い込まれて、追い込まれて、ギリギリのところで本当の力が出てきます。信じられないひらめきが湧いてきます。スタッフ全員がそんな私を助けてくれます。

 案の定、崖っぷちの心臓外科医に女神は微笑んでくれました。

 それにしても今年の七夕は一生忘れられない、いい思い出となりました。短冊に願いを書くという七夕の風習までもが私を鼓舞してくれたからです。

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南淵明宏ブログ_顔87_87替

南淵明宏(なぶち・あきひろ)

1958年大阪生まれ。大崎病院東京ハートセンター(東京都品川区)のセンター長。心拍動下(オフポンプ)冠状動脈バイバス手術のスペシャリストとして年間200例以上を執刀する心臓外科医。

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1件 のコメント

王貞治さんとの共通点

優美

 王貞治さんが監督時代に、こういう事を言っていました。「人間だからミスをするという選手がいるが、プロはミスをしてはいけない」と。 何事も「絶対」...

 王貞治さんが監督時代に、こういう事を言っていました。「人間だからミスをするという選手がいるが、プロはミスをしてはいけない」と。
 何事も「絶対」は有り得ないのですが、特に、スポーツ選手や命を預かる職業、医師などが「人間だからミスをする」なんて言っていたら、プロとして失格ということなのですね。
 優れた能力を持っている人は、分野が違っても共通点を感じます。
 「スパイダーマン」(映画)の第一作目で、スパイダーマンのおじさんが亡くなる時に「(人より優れた)能力を授かった者は、その能力を世の中(人)の為に、使う義務がある」というような事を言っていました。
 先生は、日々、それを実践しているのだと思います。
 

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