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対談(2)被災者の心の問題

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 田中 香山さんご自身も震災被災地に2度いらしたそうですが、被災地では、心の問題としてどんなことが問題になっているんでしょうか。

被害の大きさと人数の多さで我慢…抑えていたもの、どう出てくるか心配

 香山 短期間しか行っていないので、断定的なことは言えませんが、やっぱり被災者の皆さんは、よく報道されているように辛抱強く、避難所なんかでも我慢強く暮らしていらっしゃると思います。東北の方たちならではの我慢強さ、辛抱強さだと言う人もいます。

 皆さん、あんまり感情をあらわにしないんですね。私もぶしつけにいろいろお話を聞かせてもらったんですけど、「私よりもっと大変な人がいますから」ってみんな言うんですね。

 「家族の遺体が見つかっただけでもいい」とか、「もう遺体が見つからない方もいて、その方たちのほうが気の毒だ」とか。自分はまだいいほうだって、皆さん言うんですよ。「どうして私がこんな目に」とか、あんまりおっしゃらないんですね。

 精神医学とか心理学では、悲しみの経験をしたときは、その感情をきちんと自分の中で認め、悲しむときは悲しみ、泣くときは泣くということがむしろ回復を早めるんだというのが最近の定説です。

 今回は、あまりの被害の大きさと人数の多さで、皆さん我慢しているんですね。抑えていたものがいつかどういう形で出てきてしまうのか、非常に心配です。

 田中 被災していない地域でもいろんな問題が起きているようですね。

 香山 首都圏だけなく、全国かも知れませんが、今、目に見えない放射性物質への不安が広がっています。

 震災からそれほど間がない頃、「東京は今、水も飲んでいいのかどうかとか気になって大変な人がたくさんいます」と私が言いましたら、ある被災地の方から、「いやぁ、水が出るだけいいじゃないですか」と言われたことがありました。「こっちは水もようやく出た」と。

 また、「東京は今、節電で、駅も暗いんですよ」と言ったら、また別の方が「いやぁ、電気がつくだけいいじゃないですか。こっちなんか復旧したのもほんとに2日前とかですよ。真っ暗だったんですよ」とか言われました。

 被災地の方は今日どうやって生きていくか、目の前のことを一生懸命やっていて、それがむしろ心を保つ支えになっていると、ご本人たちも言っていましたし、こっちから見ていてもそう思いました。

 逆に、被災地にいない私たちのほうが情報に振り回され、動揺したりおびえたりして、何も手につかなくなっているという面があります。

 香山 藤本先生はどうでしたか? 震災で不安を感じたことはありましたか。

 藤本 そうですね、東北地方でしかつくっていない医薬品がありますので、供給が続くか不安に思いました。透析液が足りないことはニュースにもなりましたが、震災の影響は、いろんなところに及んでいると強く思いました。

 香山 なるほど。

 田中 この地震で日本の社会がもし変わるとしたら、どんなことが変わると思いますか。

人間関係は大事なもの…見直すきっかけに

 香山 そうですね、人間関係が実はすごい大事なものだということを、みんなが見直すきっかけにしてほしいですね。

 あとは、復興ということでみんな頑張っていますけれども、またネオンがギラギラして、とにかく成長して世界の経済大国という日本に戻ろうとするのか、それとも、この辺で、自分にとって一番大事なのは身近な手の届くところにあるいろんな人間関係や暮らしなんだというふうに思い直して、身の丈に合った生活スタイルを選ぶのか、今、その非常に大きな選択の岐路にいるんじゃないんですかね。

 私は、この辺で、何でも成長すればいいとか競争すればいいとかというのをちょっと考え直してもらいたいなと思っています。

 田中 そうですね。もしかしたら日本の社会が変わるきっかけになるかもしれないわけですね。

 香山 そうですね。

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