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基調講演(5)普通であることの大切さ…香山リカさん

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「不安の時代に心を保つ」

 それからもう一つ、最後に、一番大事なことだと思うんですけど、今の時代は、私がいろんな方を診ていると、普通に当たり前に生きていても知らない間に自信が目減りするような、そんな社会になっているように思うんですね。

 昔だったら「自分なりに精いっぱいやれることをやって、だれにも恥じることのない人生だ」なんて言えるはずだった人が、何か、今は、そういう生き方をしていても、ほかにもっと頑張っている人がいるとか、あるいは、今の時代に取り残されているとか、遅れているとか、何かビクビクしながら生きていかなきゃいけない、そんな雰囲気があるように思うんです。

時代に取り残される不安におびえ

 例えば、私は大学で教えているんですけども、私はあのスマートフォン(高機能携帯電話)を持ってないんです。普通の携帯電話を使っているんです。

 この間、学生が30人ぐらいいる中で、4年生だったんですけど、「この中でスマートフォンを使ってない人」って言ったら、3人ぐらいしかいなくて、みんな使っている。今、就活、就職活動するにはあれがないとだめなんだと言うわけです。

 私が使っていないというと、「いや、遅れてる」とか、「うちのお母さんだって使ってるよ」とか、いろいろ言い始めます。すると、「私は、もうついていけないんだ。今のこのハイテク時代に取り残されちゃった」と、すごい不安になったりするわけですね。

 でもよく考えたら、私はスマートフォンは使えないかもしれないけど、学生にできないことで私ができることは、もちろんたくさんあるわけです。別に引け目に感じる必要はそんなにないはずだと思うんだけど、何か新しいことができないと、それだけで自分ってだめな、つまらない、遅れた人間だというふうな気持ちにならなきゃいけない。

 いろんなところで、何か今、普通に生きる、当たり前に生きるということを、何かくすんでいるとか輝いてないというふうに、知らない間に思い込んでしまっている。あ、私なんかだめだ、私なんか人に自慢できるものは何にもないと、知らない間に気持ちが縮こまってくる。

自分を褒めて、自分に甘く生きるぐらいでちょうどいい

 だから、今の時代、私たちはもう少し自分にうぬぼれを持って、自分をおだてて、ちょっとでもうまくできたときは大いに自分を褒めて、あるいは、ちょっとぐらい失敗しても自分を許して、もうちょっと自分に甘く生きていくぐらいでちょうどいいと思うんです。

 そう言うと、「いや、こんな厳しい時代なんだから、逆だ。自分を甘やかすな、自分を厳しくするんだ」って言う人いるかもしれないけど、私は、それはもう十分していると思うんです。

 そうやって自分をきちんと保って、自分を本当に大事にして、普通の生活をしていることを誇りに思って、「これはなかなかできんぞ、私もよくやってるわ」と自分で自分を励ましていくということが、今、この困難な状況の中で自分を保つということの基本だと思います。

 そうやっていく中で、おそらく皆さんの力が、今回被災された方たちのために必要とされることも必ず出てくると思います。慌てずうろたえずに、長い目で被災された方のことをみんなで支えていくという、そういう気持ちでやっていきたいと思っています。

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