世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ
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医者の壁、または 「カムバックハートの会」 のこと
加藤周一さんの「言葉と人間」みたいな題をつけましたが、前々回予告した「医者の壁」についてです。
「医者同士、仲が悪いんですよね。出身大学とかで排他的な集団を作っていたりする。世代間のギャップもあります。コミューニケーションが難しいですよ。」
一言でいえば、こういうことです。医者は医者になった瞬間から、親からも社会からも証券会社や不動産屋さんからも甘やかされて育ったおめでたい人種で、「自分が地球上の人類で一番偉い」と思い込んで、互いに誹謗中傷しながら生涯を終える下等な動物。学会や医師会などありますが、まともな議論など一切できず、幼稚な社会しか形成できない、特殊な動物です。
そんなことを言うと、「それはまさにうちの業界にもあてはまる!」と胸にバッジをつけたおじさん達のささやきが聞こえてきそうですが、そういう言い尽くされた話はこれで終わりにして、医者同士のつながりについて紹介します。
心臓外科医の「一部リーグ」
先日、患者さんの集まりに先日招待されました。カムバックハートの会です。私が僧帽弁形成術を執刀させていただいた40代の男性患者さん(佐賀さん、仮名)がアップしているホームページに共感を寄せ、集まってこられた方々です。
皆さんは心臓手術に係る患者さんです。だいたい佐賀さんの年齢に近い40歳前後で、心臓手術を受けた患者さんの中では比較的若い年齢層と言えます。
日曜日のお昼時、横浜の山下公園に30人ほどが集いました。宮城や滋賀からもお越しいただきました。
この中で私が執刀させていただいた患者さんは6人。他の患者さんは皆、「どこかの誰かに」執刀してもらったということですが、一人を除いて、執刀医は私の顔見知り。心臓外科医の世界は狭い狭い世界です。
というか、心臓外科医の「一部リーグ」というのがしっかりと形成されていて、そういった心臓外科医で日本中の心臓手術は独占されつつあるのだなぁ、と感慨を受けた次第です。その数、だいたい30人ぐらいでしょうか。ただし「自称心臓外科医」は全国に1400人近くいます。
手術はこれから、という方も4人ほどおられましたが、やはりしかるべき心臓外科医による手術が予定されていました。
そんな執刀医を、皆さんは例外なく尊敬されており、近寄りがたい存在と崇めておられるようです。
「I先生はニコリともしないでたんたんと、それはそれは丁寧に説明されるんですよ。すごく安心できました。」
「A先生は自慢のホームページの話ばかりするんですよ。楽しい方です。元気が出ます」
私のライバル達はさすがです。
「そうなんですか。でもすばらしい心臓外科医に手術をしてもらってよかったですね。それにしてもあのセンセイはちょうど私と正反対の性格なんですよ」などと、いろいろ説明もしてしまいました。

30人の一部リーグの心臓外科医は皆それぞれがユニーク。正反対の性格とも言えます。30次元のベクトル空間なのです(それぞれが直交する30本の単位ベクトルで構成された空間)。
患者に相対する手法だけをとっても、それぞれバラバラなのです。言い換えれば、いろいろな「技」で患者さんを引き付けています。手術の腕だけではないのです。「人となり」といった「技」なのです。これはいい意味での多様性です。
そんな技がぶつかると、「あいつとは考え方が違うよ。一緒にしないでくれ」となることもあるのですが、高め合うレベルの切磋琢磨。そういう「壁」って、あるべきだと思います。
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(元)患者の集まりを開催しました、カムバックハートです。先生の記事を拝見して、心臓手術のあちらとこちら、患者側の視点と、お医者さん側のそれの違い...
(元)患者の集まりを開催しました、カムバックハートです。
先生の記事を拝見して、心臓手術のあちらとこちら、患者側の視点と、
お医者さん側のそれの違いが分かってとても参考になりました。
患者側の心境は、心臓手術という一つの理不尽な運命のイベントをきっかけとして、
それまで見ず知らずであった者同士が、知り合うことができ、その仲間の輪をまるで
人生の宝物のように大切に思っています。
例え初対面でも、古くからの親友のような感覚を得た、まるで同窓会のようだったと、
今回参加した皆さんが例外なく言ってました。
しかも、普段は診察室でしかお話することのない、心臓外科医の先生や手術室看護師の
おねえさんと、自然な会話を楽しめるという大きな特典付きで。
先生が感じられたように、其々の患者は、間違いなく其々の執刀医を慕って敬っています。
一方、先生の視点からは、やはり気になるのはライバルのことなのでしょうか。
患者を少しでも魅了する様々な手法を巧みにアピールして、一部リーグの先生達は
ご活躍されているのですね。
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