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基調講演(4)物事を長い目で見る…香山リカさん

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「不安の時代に心を保つ」

 少し長い目で、長い期間で物事をとらえる、これも言い古されたことですけども、もう一度、確認しておいたほうがいいことかもしれません。

 特に今の時代、何でも即断即決ですぐやらないともう遅いみたいな雰囲気があります。けれども、物事って、その時失敗だと思っても、後から思い返せばあれは必要なことだったんだとか、あの時ああしておいてよかったんだということもありますよね。

 あるいは、その時はもうこれしかないと思ってやったのに、後になってみて、いや、やっぱり違っていたというふうに、その時の気持ちと後になってからのとらえ方が変わってくるということだって幾らもあると思います。

 例えば、私の領域で言えば、うつ病の方なんかもそうですね。

 うつ病になって診察室を訪れる。私が「ああ、これは典型的なうつ病ですね。大丈夫です。うつ病はしばらくすると治ると思います。ただ、きちんとお薬を飲んでいただきたい。それからもう一つ、休養が必要です。とりあえず2か月休職していただけますか」なんてお話をする。

 すると、働き盛りの企業にいる人なんかは、「いや、先生、とんでもない。うちは2か月なんて休んだら、もう出世レースから外れてしまって、大変なことになります。とにかく心の病気で休むなんて、周りに知られるのも嫌だ。何とかなりませんか」って言われる。

うつ病になって休職…振り返ってプラスに考える人も

 説得して、休んでもらうと、病気のほうは回復してきます。そうすると、やっぱり出世レースみたいなところからはちょっと外れ、復職する時にはその人が望んでない、ちょっと暇な、仕事の楽な部署に異動になったりする。

 最初は、「もうあんなところはおしまいだ」とか「あんなところは掃きだめみたいなところだ」とか、ひどいことを言うわけです。

 ところが、ほとんどの方は、そこに行って、「いやぁ、もうおしまいのところに来ちゃった」なんて言わないですね。多くの方は、「いやぁ、先生、よく考えてみたら、前の働き方、あれはおかしかったですよね。朝早くから夜、終電まで働いて、周りの人もみんなライバルだと思って全然心も許せない、ぎすぎすした中で仕事しなきゃいけない。今回ここに異動になって、確かにここは出世とはほど遠い部署かもしれない。でも、皆さんいい人でね、和気あいあいと自分のペースで仕事をしている中で、結構やるべきこともあってやりがいのある仕事だということもわかってきたんです」

 あるいは、「ここはあんまり残業も多くないので、6時とか7時に帰れるので、家族みんなで夕食を食べたりもできますしね、そうしたら子供もすごい喜んでいるんですよ。だから、そういうふうに考えれば、私、うつ病になってよかったかもしれないですね」なんて、病気になったことをプラスに考えて振り返るという方も少なくないのです。

 うつ病ということを考えても、なった時は、もうおしまいだとか、絶望だとかってネガティブなマイナスの判定をしますけども、時間がたつととらえ方が変わってきて、「あ、病気になったのは私にとって必要だったんだ」とか、「あのままあの忙しい部署で出世のことだけ考えていたら、今ごろ過労死していたかもしれない。命拾いをさせてもらったというふうに思いますよ」なんて、プラスに評価するようなことも多いのです。

短絡的に答えを出しすぎない

 そういう意味でも、今起きたことに今答えを出す、あ、失敗だった、もうだめだとか敗北だとかって思うのは、ちょっと短絡的過ぎる。嫌なことがあった時は、「ちょっとまだわからんぞ。今は確かにこれはあんまりうれしいことではないけど、もしかしたらいつか意味が変わるかもしれないぞ」って、あんまりそこで一々ガーンと落ち込で、答えを出して、もうおしまいだとかって思い過ぎない。ちょっと長い目でとらえることにする、これも必要かと思います。

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