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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

患者の権利と心得

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 最近、医療過誤訴訟が増え、賠償額が増大する一方です。そこで、患者の持つ権利と、患者として医療職に対する心得について述べたいと思います。

 誰でも、良いかかりつけの医師または病院を持ちたいと思っていますが、患者の持つ権利とはどの範囲か、また医師や病院に対しての患者としての心得は何かを皆さんに分かってもらうことが必要だと思います。

ペイシェント、クライエント、コンシューマー …「患者」に複数の意味

 患者という漢字の言葉は、医師がつけた名称です。「患」とは患うこと、患者とは病気を患う人のことです。英語のペイシェント(patient)と言う言葉は「堪え忍ぶ」という意味を持っています。英語ではまた、専門的医療を受けることを願って医師を訪れる人をクライエント(client)と呼んでいます。日本語の患者は、ペイシェントともクライエントも呼ばれているわけです。日本では、心理療法や精神分析の専門職、ソーシャルワーカーから指導を受ける人は、患者とは言わず、クライエントと呼んでいます。

 デパートや専門店に買い物に来る人が消費者(consumer、コンシューマー)と呼ばれていますが、英米では「患者」との命名の代わりに、買い物の客のようにコンシューマーと呼んでいる場合があります。こういう立場から、医師と患者とが対比されると、医療は商品のようになり、医療補償の問題が起こって来る可能性が増してきます。

主治医と専門医

 医師は皆、医師国家試験を受け、誰もがある程度の医学的知識を持っていると一般人は考えていますが、僻地で、しかも単独で医療を行っている医師は、進歩する医学を学習する機会がなかなかありません。そこで、専門医による診療が必要な場合は、患者は主治医に頼んで、専門医のいる病院へ詳しい病状を書いた紹介状を作ってもらって、タイミングよく受診すべきです。

 最近多くの病院では、患者さんと言わず、「患者様」としてお客さま扱いのサービスをするように努力していますが、患者は医師ならば一様に「先生」と呼び、看護師ならば、「看護師さん」と呼んでいます。

 今では高い診断能力と高い医療技術を持つ看護師も増え、そのような看護師には専門ナースの名称もあります。医療職や看護職の呼び方は誠に難しいですが、医療職が患者を表現する場合にも、以上のように何種類もあることを了解してほしいと思います。

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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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