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「平穏死」石飛幸三さんインタビュー全文(1)延命と正反対のこと書いた

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 「『平穏死』のすすめ」(講談社)を昨年2月に出版した、特別養護老人ホーム常勤医の石飛幸三さんは、終末期の高齢者には過剰な水分や栄養を控えて、穏やかな最期をと訴え続けている。(藤田勝)

石飛幸三(いしとび・こうぞう)
 1935年、広島県生まれ。慶応大医学部卒。ドイツの病院で血管外科医として約2年勤務。東京都済生会中央病院副院長などを経て、2005年12月から東京都世田谷区の特別養護老人ホーム「芦花ホーム」の常勤配置医。

 ――著書は4万5000部も売れたそうですね。予想していましたか。

 石飛 全く予想外でした。芦花ホームでの自分の経験を広く知ってもらおうと、原稿を出版社に持ち込んだのですが、「こういう本はすでに、いろいろありますからね」と編集者の反応はあまり良くなかった。「じわじわ売れて、2000部いけばいいでしょう」ということでした。

 ――出版後は全国で講演を続けていますね。

 石飛 もう100回近くやりました。さらに来年1月まで予定が入っており、週末も休めません。1人でも多くの方に終末期の問題を考えてもらうきっかけになればと思っているので、呼んでいただければ、どこへでも行くつもりです。

 ――疲れはたまりませんか。

 石飛 新幹線の中では、いつも寝ています。でも、島根県まで車で往復したこともありました。

 ――なぜ、それほど反響を呼んだと思いますか。

 石飛 40年以上も外科医として延命至上主義の現場で働いた人間が、70歳近くになり、そうした医療の在り方に疑問を持って特別養護老人ホームに来た。そして胃ろう(腹部に穴を開けて管で胃に栄養剤を直接入れる方法)に代表される、終末期の人工的な栄養補給の問題にぶち当たり、延命と正反対のことを本に書いた。

 最初は、そこに興味を持たれたのかなとも思いましたが、結局、分かったことは、私が書いたことは、みんなが感じていたことだったからです。

 ――決して突飛な主張ではなかったということですか。

 石飛 もっと前から、私と同じようなことを指摘している人も、同じような実践をしているホームもありました。みんなが分かっているのに言えなかったことを、怖いものがない年齢になった私が、たまたま本に書いただけです。だから出版後は「よく言ってくれた」というメールを、医療や介護の関係者からたくさんもらいました。(つづく)

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