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[被災した子どものケア]お絵かきで不安を表出

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 東日本大震災で被災した子どもの心を癒やすため、絵画や粘土遊びなどをするボランティア活動が行われている。感情を自由に表現することで不安や恐怖心を外に出し、気持ちを落ち着かせる効果が期待できるが、信頼できる大人が見守りながら行うことが大切だ。(利根川昌紀)

大人付き添い、感情の波見守って

 山形県米沢市の保健福祉施設で14日、福島県から避難する子どもを対象に、自由にお絵かきや粘土遊びなどを楽しむ会が開かれた。

 参加した小学4年生の込堂(こみどう)あす美さん(9)は、数種類の絵の具をパレットに出すと、様々な太さの筆を使って母親の姿を一気に描き上げた。あす美さんは「お絵かき大好き」とにっこり笑った。

 あす美さんは3月15日、福島県浪江町から家族6人で同市に避難してきた。父親と祖父母は仕事などで福島に戻り、今は母親と姉の3人で市内に暮らしている。

 3月下旬から始まった、この会には毎回、参加している。

 会でボランティア活動する小学校の臨時職員、佐藤敬子さん(29)によると、あす美さんは4月初旬、絵の具で家族6人の姿を描き、「もっと たのしくなーれ」とメッセージを添えた。母親の小百合さん(40)は「避難所で不安を口にしたことはなかった。心に押しとどめていたのですね」と思いやる。

 活動を行うのは、絵画などによる心理療法「アートセラピー」を学ぶ講座の修了生たち。3月下旬から被災地などで1~2週間に1回開き、現在、16か所で活動を続けている。

 講座を開く「ハート&カラー」代表でアートセラピーに詳しい末永蒼生(たみお)さん(67)は「思いを言葉で表すことは子どもには難しいが、絵や粘土遊びなどは自然に手が動き、表現しやすい」と指摘する。

 18日に福島県いわき市で開かれたお絵かきの会では、3歳の男の子が「津波が来たの」と話しながら絵を描いた。これまで5回ほど教室に参加していたが、初めて津波のことを口にした。

 末永さんは「心の中にある恐怖心や不安を外に出せると、精神的な苦痛の解消につながる」と説明する。

 怒りや不安を外に出すと、その感情を制御できずに言動が暴力的になり、かえって心の傷を深めてしまう場合もある。

 臨床心理士で、静岡県富士児童相談所の中垣真通(まさみち)さん(45)は「不安感や恐怖心は少しずつ放出することが大事。感情を制御できなくなった時は、そばにいる親や大人が声をかけて気持ちを受け止め、緊張感を解いてやってほしい。また、深呼吸や肩の上げ下げなどのストレッチも心身の緊張を解くのに有効だ」と助言する。

 臨床心理士らで作る日本心理臨床学会は今月、アートセラピーなどを行う際の活動指針を公表した。

 指針では、〈1〉継続的にかかわる〈2〉臨床心理士や教師など、子どもの対応に慣れた専門家が付き添う〈3〉子どもと信頼関係のないまま被災体験を表現させない――ことなどを盛り込んだ。

 指針作りにかかわった中垣さんは「同じ大人が継続的にかかわることが望ましい。恐怖体験を無理やり話させることはせず、自発的に口にした時は相づちを打ちながら傾聴し受け止めてあげることが重要」と話している。

アートセラピー
 絵画や陶芸などを通じて感情を表に出し、心を落ち着かせる手法。自発的に作品づくりに取り組むため、意欲や注意力が増す効果も期待できる。ゲームやスポーツなどでストレスを発散させ、心の安定を図る「プレイセラピー」などの手法もある。
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