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いきいき快適生活

介護・シニア

被災地 心のケア(5)寄り添う姿勢が原点

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心のケアの原点とされる神戸に中井久夫さん(左)を訪ねて話を聞く南記者(5月9日、神戸市垂水区で)=原田拓未撮影

 「心のケアが避難所で拒否されている」。こんな話を被災地の医師から聞いた。

 5月半ば、突然の電話に、看護師の阿部幸子さん(53)は耳を疑った。岩手県赤十字こころのケアセンター統括として、避難所に「日赤こころのケアチーム」を派遣しているが、現場の保健師が、「避難所では『心のケア』と名乗らないで」と言ってきたのだ。

 「何かご迷惑でも……」。心配して尋ねると、保健師はこう説明してくれた。

 「心のケアと掲げる色々なチームが避難所を訪れ、被災者に質問するので、被災者が辟易(へきえき)して、他の避難所に移りたいと言うのです」

 確かに5月初めの週末、ある避難所では、精神科医、看護師、心理カウンセラーなど専門職のチーム、市民ボランティアなど、十数のチームが、心のケアと書かれた札や腕章をつけて被災者を訪れ、活動していた。

 4月に宮城県南三陸町の避難所で会った79歳の女性を思い出した。津波で娘を失ったつらさを私に、「誰でもいいから聞いて、という思いと、そっとしておいて、という気持ちが行き来するの」と訴えていたのだ。

 岩手県内の避難所を歩いた看護師出身の衆議院議員、山崎摩耶さん(64)は「心と言えば、精神科と思う人も多い。でも、何より気になるのは、心のケア『してあげる』というおごった姿勢。ケアは傍らに寄って行うものです」と指摘する。

 「心のケア」は、1995年の阪神大震災後、被災者の心理的支援の必要性を叫ぶ言葉として登場した。復興過程では心的外傷後ストレス障害(PTSD)専門施設、「兵庫県こころのケアセンター」ができた。初代所長の精神科医、中井久夫さんを神戸に訪ねた。

 避難所の話に中井さんは「心のケアは、そううたって何かするというものではない」という。

 「神戸では、被災者の心のケアを、一人にしない、体験を分かち合う、生活再建、の3段階で考えました。今回『寄り添う』という言葉を聞くが、その通りです。震災後、100日くらいで被災者の向き合う相手は自然から人間に移り、苦痛の質も変わってきます。まさに今からです」

 隣人として患者に接する医師など、寄り添う姿は今回の取材でも心に残る。被災者の怒りが人に向き始めてきたこともうなずける。

 心のケア――その意味は必ずしも明らかにはならなかったが、被災者の苦しみに思いを重ねることから始まるのだと思う。(おわり)(編集委員 南 砂)

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