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(1)脳卒中を防ぐために

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 天野隆弘・山王メディカルセンター院長による講演「人間ドックの上手な受け方」が昨年11月25日、東京・赤坂の山王病院で開かれました。天野さんは、ドックの有効利用法や最新技術などについて説明し、参加したヨミドクターのプラス登録(有料)会員ら約80人は、メモを取るなどしながら聞き入っていました。講演の内容を詳しくお伝えします。

ドックの役割

 ドックにこられた方に対しての私どもの役割は、4つあると考えます。1つは、以前から身体な異常所見がありながら症状なく経過している場合。年々どのように変化しているのかをみて、このまま放置していいのか、医者にかかった方がいいかを判断します。

 2つ目は、高血圧や糖尿病などすでに医師の治療を受けているが、ほかに病気がないか全身のチェックをなさりたいという場合です。

 3つ目は、すでに病気の状態になっているのに、気づかれない方で、結構いらっしゃいます。すぐにでも治療を始めた方がよい状況を見つけ、適切な受診のアドバイスをする役割です。

 4つ目は、最近よく言われる「未病(みびょう)」というまだ病気でない状態。簡単にいうと、いろいろな病気を引き起こす危険な要素である”危険因子”がいろいろあって、このままでいくと数年の間に病気になりかねない状態なのに、気づかない人。どう対処したら良いのかをコメントすることが大事な役割だと思っています。

 このように役割はいろいろですが、多くの人には1年後の次のドック受診までは「大丈夫です。自信をもってご活躍ください」と太鼓判をおしています。

日本人の死亡原因の上位

 日本人の死亡原因の第1位は、ご存知のように「がん」です。がんは約30%を占めますが、がんにも、胃がんや肺がん、子宮がん、乳がんなどいろいろあって、がん全体でこのように多いのですが、それぞれのがんで症状、展開も異なり一様ではありません。

 その次は、心臓の病気です。心臓の筋肉に栄養を運ぶ”冠動脈”の動脈硬化がすすみ、栄養状態、酸素供給が悪くなり、心筋梗塞(こうそく)や狭心症を引き起こすのが主なものです。心不全など他の病気も含め、十数パーセントあります。

 それから脳卒中です。

 これら3つの病気でも、心臟の病気と脳卒中は、心臓や脳に及ぶ血管を通じた病気です。その背景には、みなさんよくご存知の動脈硬化があるわけです。

脳卒中を防ぐために

 脳卒中のタイプは2つに分かれます。1つは脳の中に出血してしまうものです。代表は「脳出血」といわれるもので、かつて1960~62年ごろでは非常に多く、死因の一番でした。

 動脈(りゅう)という脳動脈から風船のようにぷくっと膨らんだものができて、それが破れる「くも膜下出血」というものもあります。2010年4月、巨人軍の木村拓也元コーチが、突然グラウンドで倒れ亡くなったのも、くも膜下出血でした。

 もう1つは、脳の血管に血の流れが悪くなったり、脳の血管が詰まったりして、脳へ血が行かなくなり、脳の組織が壊れてしまうもので、「脳梗塞」と呼んでいます。その中には、「脳塞栓」「脳血栓」というものがあります。

 脳卒中は、突然まひになったり、言葉が出なくなったり、半身の感覚がなくなったり、見ている視野が狭くなったり、右と左が分からなくなったりと、実に様々な症状があります。現在は治療技術が進歩していますし、脳卒中にならないように予防する方法も進み、死亡率が減ってきています。

 病気には、身体を危険な状態にする「危険因子」があります。例えば脳梗塞の危険度を高める要因を「脳梗塞の危険因子」と言っています。この危険因子をコントロールして、脳卒中を予防しようということなのです。

 この脳卒中の危険因子には、いろいろな研究で指摘された色々なものがあります。高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、たばこ、アルコールの多飲、肥満、メタボリック症候群などがよく知られています。

 このように生活習慣に結びつくような様々な危険因子をどのように考え、どれぐらいの値であれば治療が必要なのかを考えて、早めに対応していかなれければいけません。

 ところが、ここ2、3年、高血圧の基準や脂質異常症、糖尿病の診断基準などが、どんどん変化し、専門家の私でも基準値がいくつだったかなあと迷うほどです。

 医療法人財団順和会 山王メディカルセンター院長 天野 隆弘(あまの・たかひろ)さん

 慶応義塾大学医学部卒、医学博士。慶応義塾大学教授、財団法人慶応義塾健康相談センター(人間ドック施設)センター長・理事などを経て、2009年10月より現職。山王メディカルセンター予防医学センター長、国際医療福祉大学教授、慶応義塾大学客員教授なども兼ねる。

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