文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

こころ元気塾

医療・健康・介護のニュース・解説

作家村山由佳さんインタビュー全文(5)女性が稼ぐようになって未婚率高まった

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 ――結婚しない人が増えています。30代後半では、男性は未婚率が30%を超えています。何が原因ですか。

 村山 女性が自分で稼ぐようになったことが一番大きいと思います。日本は経済的に先細りになっていく、親になる自信もない。この男で大丈夫なのか、という条件の面で見定めすぎて、結婚に尻込みしている。でも、そんな結婚ならしないほうがいい。何かの時は私が養ってやる、くらいの覚悟がなければ結婚しないほうがいい。

 ――女性が稼げるようになったという、社会的な原因が大きいですか。

 村山 フランスのように、結婚していなくても、同棲していれば、あるいは子供ができれば、社会的な保障が受けられるとか、結婚しているのと同じように扱う制度があれば変わります。

 ――大津秀一さんの「死ぬときに後悔すること25」によると、結婚しなかったことを後悔して亡くなる人も多いそうです。2度結婚なさって、暮らしがどう変わりましたか。

 村山 経済的な面では変わっていません。前夫は、生活のあらゆること、主夫業をしてくれる人でした。今回は、一緒に暮らし始めようとした時、「家のことは一切しないけど、それでもいいか」というので、私は「家事一切をさせていただきます」と言いました。「男は『ろくでなし』の方が、小説は結実します」、なんてことを私が言うために、「ろくでなしでなくなったら、俺は捨てられる」と、ずっとろくでなしのままでいます。物書きとしてはいい燃料を手に入れたのかな。これはちょっとひどい物言いですね、反省します。

 物書きであることを横に置いても、私が女であることを活性化させてくれます。私は、女でしか書けないものを書きたい。私自身が枯れてしまったら、書けなくなるものがたくさんあると思います。

 結婚して、夫によって女としての面を活性化し続けられる妻は、ごく少数だと思います。結婚は日常なので、毎日発情していると、ものすごくしんどい。恋愛は、くべる蒔がないと燃え続けないけど、結婚生活にはじゃまだと思います。結婚生活には不幸の種はないほうがいいですし。だから難しい。

 ――結婚して、恋愛とは並び立たない、二律背反なことをしたと思いますか。

 村山 その恐れが強かったですね。結婚したら、恋愛感情や、相手を「オス」だなと思う瞬間が少なくなるように思って怖かったです。一緒に暮らして4年くらい、結婚して1年半くらいですが、ほとんど家にいないろくでなしなので、うまい状態を保っていてくれます。結婚しているという感じがあまりしないですね。

 ――恋愛はとても大事なものだとして、結婚するか、結婚しないでパートナーのままでいるのがいいか、いかがですか。

 村山 結婚を便利な制度と思って利用するのがいいのかなと思います。結婚に夢を抱きすぎたり、結婚さえすれば男と女の絆が深まると思ってしまうと、失望が大きかったりするので、人として互いの絆が深まったうえで、結婚という制度は私たちにはいいわね、というスタンスがいいのかな。

 恋愛であれ、結婚であれ、相手とどれだけコミュニケーションをとることができるか、コミュニケーションをとる努力をするか、ということが最も大切だと思います。

 ――「死ぬときに後悔すること25」では、亡くなる前に「子供を育てなかったこと」を後悔する人が多いといいます。子供を持つことについて、どう考えていましたか。

 村山 子供は、たまたまできませんでした。できなかったことがものすごく悲しいかというと、そうでもないんです。どうしても子供が欲しくてたまらない人には届かない言葉かもしれないけれど、子供がいないことで、子供があったら生きられない人生を生きる自由もあるので、互いに自分の状況を受け入れるしかないと思います。

 私にとって子供が生まれなかったことは、そのぶんの時間なり心の部分なりを、他の何かに使いなさい、ということだったと思うしかありません。現実にパートナーが9歳下なので、子供を産んであげたかったという気持ちも皆無ではないですが、それはどうにもならないし、大切なのは、お互いが笑いあえることだと思う。死ぬ時にならないと答えの出ないことで、後悔するかもしれないけれど、あきらめて死ぬだろうと思います。あきらめるというのは、明らかに極めるということが語源だそうなので、決して後ろ向きのことではありません。(つづく)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

こころ元気塾の一覧を見る

最新記事