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災害時の心のケア (2) 現地の要望とのミスマッチ

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震災から2週間たったら

 

 被災した直後に自衛隊が救援活動に行ったことは、みなさんよくご存じだと思います。いわゆる自衛隊による緊急支援です。医療支援にも緊急活動というのがあります。一般的には大きな災害があって2週間が緊急期間のピーク時とされます。

 雰囲気としては早く治療してほしいという状態なんですね。着の身着のままで避難されているし、けがをされている方も多いし、気も動転している場合もあります。簡単な言い方で恐縮ですが、痛くてしょうがない、身体がつらい、吐き気もするし、お腹も下しているといったような状態です。

 こういう時は医師の顔が毎日変わってもさほど苦にならない、つまり治してくれさえすればいいという感じなんですね。食事もそうです。同じものでもかまわない。とにかく食べるものを手に入れたいという感じなのです。大きな災害があったとき、このような要求に即時に答えることができることは、非常に重要です。

 しかし1か月ぐらいたつと、現地の人と救援活動をする人の間に、気持ちのミスマッチが少しずつ起きてくるんです。

 現地はそろそろ緊急ではないという気持ちが芽生え始めます。2週間までは一種の興奮状態が続きますが2週間過ぎたころから早く日常生活に戻りたいという気持ちがわいてきます。疲労も増してきてイライラが目立ち始めます。

 このことには私自身も「気づき」が足りなかったと反省しています。現地との調整がもっとも難しかった点がここでした。被災された方々は自分の日常を立て直したいという気持ちが頭の中で膨らんできているのに、私たちはまだ緊急体制だと思っている。このミスマッチは時間が経つほどギャップが際立ってくるものでした。

 ともすると、「被災者」 「被災地」 「緊急支援」という言葉すら、現地の方々には耳ざわりに聞こえたかもしれません。しかし、1か月以上経ってもこうした言葉を使っていた支援部隊もいました。現地の方々は○○町の方とか具体的に言ってほしいものなのです。被災者や被災地という言葉をいつまでも無神経に使っていてはいけないと思いました。



ジレンマに悩んだ

 大きな災害が起こったら2週間以内に緊急体制を敏速に組むことは非常に大切だということは私も身にしみてわかりました。緊急体制はすぐ出来なければいけないんです。少し様子が落ち着いたらやりますでは間に合わない。被災地は生き物のように刻々と状況が変わるんですね。人の気持ちも変われば、生活の状態も変わる。緊急時の体制を真似てそろそろ何かやろうと東京から企画して持っていってもすでに遅かったり、もっと違うことをやってほしいと言われたりとジレンマに悩まされました。

 緊急支援という名目で送られてきた食事が余っているというニュースをお聞きだった人もいると思いますが、医療支援についても同じようなことが言えます。現地の方々から「いろんな人が来てお手伝いしたいと言われるが、こちらのやってほしいことはやってもらえない。誠意があっても地元のニーズとミスマッチしている場合はボランティア活動にならない。長期支援には現地のニーズに合わせるという忍耐力が必要なんです」と言われました。

 受け止めてもらえる仕事を探しに行くというのは、思ったほど簡単ではありませんでした。



あらゆる要求を含めて「心のケア」

 福島県庁に行ったときには「心のケアのお手伝いというお気持ちはありがたいが、ただ話を聞くだけではダメなんです」と言われました。

 どのような訪問看護をしていただけるのかとか、将来の遠隔医療については具体的なアイデアを示して欲しいと言われました。支援の幅を広げていくことができるか。現地の人が何を求めているのかをキャッチして支援につなげていくことができるかが課題だと。

 たとえば弁護士がほしい、融資してくれるところが欲しい、両親の面倒を見てくれる所が欲しいなどあらゆる要求を含むケアができなければ心のケアではないということです。

 今後は他県からの医療支援者の数が減っていくことが考えられます。被災された方たちの生活もどんどん変化していくことでしょう。長期支援とは人間の力で何がどこまでできるかの勝負だと思います。看護の力とは柔軟性を持って人々と接しながら医療の全人的な治療に貢献しなければならないからです。

◆◇◇   ◇◇◆

 ※ ブログ「石井苗子の健康術」はこちら

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