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[帝王切開]無理解に傷つく産後

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 帝王切開での出産は今や5件に1件にのぼる。特別な体験ではなくなったのに、正しい知識が浸透せず、「普通に産めなかった」と落ち込んだり、周囲の心ない言葉に傷ついたりする母親がいる。(中島久美子)

授乳・成育の心配なし

細田さん(左)と今月成人した長女実咲さん。細田さんは、3人の育児を通じ、「大事なのは産み方より育て方」と実感しているという=工藤菜穂撮影

 「おなかの傷以上に、精神的な痛みが大きかった」

 さいたま市の細田恭子さん(46)は、長女実咲さん(20)を出産した体験を振り返る。陣痛が弱くお産が進まず、緊急に帝王切開に。不安や、「女性としてできるはずの出産ができなかった」という戸惑いから涙があふれた。

 さらに、見舞客の言葉に打ちのめされた。

 「産道を通らない子どもは、我慢強くないと聞いたわ」

 その後、二女、三女も帝王切開で出産したが、帝王切開の体験を話すことはほとんどなかった。

 転機は、2000年、ホームページ「くもといっしょに」(http://www5a.biglobe.ne.jp/~withkumo/)を開設した時。身辺の様々な出来事を書く中で、思い切って心にしまっていた帝王切開を巡るつらい体験をつづってみた。すると掲示板に、同様の体験が続々と寄せられた=表=。いつしかサイトの中心は、帝王切開になった。今も書き込みは途切れない。

帝王切開体験者が傷ついた周囲からの言葉
 ・麻酔をして楽に産めてよかったね
 ・(出産の途中で帝王切開になり)最後までがんばれなかったんだ
 ・次は普通に産んでね
 ・産道を通っていない子は我慢強くないと聞いた
 ・帝王切開だと母乳が出ないのではないか
 (細田さんのサイトに寄せられた体験談から)

 東峯(とうほう)ラウンジクリニック(東京都江東区)代表の産婦人科医・竹内正人さんは「帝王切開の理由は様々でも、すべて医師が、母子の救命に必要と判断した場合で、妊婦が楽をしたいからという理由で行うことはない」と説明する。そもそも、開腹し子宮にもメスを入れるので出血の危険もあり、術後は痛みもあり、身体的な負担も大きい。

 また、我慢強くない子どもに成長するなど心身への影響を及ぼす事実もないという。「母乳が出ないのでは」と言われ、落ち込む女性もいるが、産後すぐに赤ちゃんに乳首を吸わせるなど普通分娩(ぶんべん)同様の十分な取り組みをすれば、これも問題ない。

 竹内さんは長年、流産や死産を経験した女性の心身のケアに力を注いできた。その中で、帝王切開も、予期せぬ出産を迎えたショックがあると気づき、支援の方法を探り始めた。

 竹内さんは「母親は、元気な我が子に会えただけに、ショックや悲しみを、いけない感情として、抑えてしまいがち」と説明、「医療者や家族は、母親の複雑な心情を理解して接してほしい。それが伝われば、母親が、自由に思いを語り、帝王切開による出産を前向きに受容するきっかけになる」と助言する。

 細田さんも、体験者として、各地で帝王切開の体験を伝える活動に協力している。同じ体験をした者同士、安心して自由に思いを語りあえると好評だ。これから出産する女性の役に立ちたいとも思う。

 「誰もが帝王切開になる可能性があります。知識がないと不安が大きくなるので、妊娠中から情報を集め、体験者の話を聞いて、出産に備えてほしい。産院や自治体の母親学級でも、帝王切開について伝えてほしい」と呼びかけている。

細田さんが参加する帝王切開を振り返る会
 31日午前10時、東京都杉並区の高井戸会議室で。参加費500円(同室での託児は、保険代200円)。名前、住所、参加動機を書き、主催の「see mom, be mom(シーマム・ビーマム)」事務局(メールはseemombemom@gmail.com)へ。
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