医療部発
医療・健康・介護のコラム
人生の最期、冷静に見つめていた団鬼六さん
今年1月掲載の医療ルネサンス「がん 共生時代 私の物語」で取材させていただいた作家の団鬼六さんが5月6日に亡くなられた。
インタビュー取材の時期は昨年11月下旬で、団さんは食道がんの治療を終え、退院されてから9か月たっていた。腎臓が悪く、週3回の人工透析治療も受けていらっしゃった。人工透析は受けた翌日は体調がよく、仕事がはかどるとおっしゃっていたように記憶している。そんな貴重な時間を使って、初対面の私に、死生観や生の悦びについてお話くださった。
記事にもさせていただいたが、インタビューで団さんは柔らかい口調でこう話されていた。
「がんにも良いところがある。脳卒中とか心臓病とかは死ぬのは突然。がんは、医師に言われてから半年から1年は生きられますわ。僕の場合は、放射線で治療して、あと1年はあると思うんだけどね。家族に言い残すことは言い残して、お別れの原稿も書いておこうと思いますよ」
「あと1年」ほどは、残された時間はなかったものの、人生の最期の時を非常に冷静に見つめていらっしゃったと思う。
「まだ銀座とかで飲まれるんですか」という不躾な質問に対して、「銀座にはしょっちゅう今でも行きますよ。酒抜きだけどね。ついこの間もキャバレーに行っていましたからね。楽しんでいますよ」とお話になり、銀座のキャバレー「白いバラ」で開かれる忘年会に誘っていただいた。
この忘年会の時には、1月半ばごろに入院し、再発したがんを取り除く内視鏡治療を受けられることが決まっていた。
残念ながら、私が団先生にお会いしたのは、この2回だけだった。ご体調が気になって、再度のインタビューのお願いを遠慮してしまっていた。
昨年11月のインタビューではこうお話になっていた。
「死ぬ時はここで(自宅で)死ぬっていうつもりですよ。痛い、痛いって言いながら死ぬつもりです」
もしこの春に、取材でお話をお伺いする機会をいただいていれば、さらに赤裸々で自然で魅力的な言葉がお伺いできたのではないかと思う。
ご冥福をお祈りいたします。
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渡辺理雄 2008年12月から医療情報部。脳卒中、リハビリテーション医療などを取材している。ジャイアンツの日本一奪回に向けて、今後の巻き返しに期待。
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