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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

受動喫煙のことをご存じですか?

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 日本人の死亡原因の第1位は、がんです、がんの中で一番多いのは肺がんです。英米では、肺がんの死亡率が世界でも高かったのですが、無症状のうちに肺のエックス線撮影で発見するよりも、国民の間に禁煙運動をした方が、結果としてはがん死が少なくなることが認識され、アメリカ、カナダ、イギリスともに禁煙運動が盛んです。

 日本はどうかというと、がんの中では胃がんが圧倒的に多かったので、胃がんの集団エックス線検査が世界一発達することになったのです。

 アメリカ人も、アメリカの日本人二世の間にも胃がんはほとんど見られないことから、食べ物の影響と考えられ、日本人が熱い汁物やアルコールの濃度の高い酒、塩気の強い食事を控えるようになり、最近の検診では、乳がんや肺がんのほうが増えてきたのです。

 肺がんは、喫煙によるものが圧倒的に多いのです。そして、家庭内や職場のヘビースモーカーの側で、たばこの煙を吸い込むことで肺がんにかかるという、受動喫煙による発病が少なくないことが分かってきました。

受動喫煙の死亡者数、年間に6800人

 この受動喫煙が原因で死亡する人の数は、厚労省の研究班の推計では、年間に6800人に達し、交通事故による年間死亡者を上回る数です。

 たばこの煙は、喫煙者が直接吸い込む「主流煙」と、これを吐き出した「呼出煙」、そして、たばこの先から立ち上る「副流煙」の3つに分けられます。受動喫煙で吸い込んでいるのは、呼出煙と副流煙です。主流煙と副流煙には、発がん物質をはじめとする人体に有害な化学物質が250種類以上含まれています。しかも、受動喫煙で吸わされている副流煙の方が、主流煙よりも有害物質の含有量が多く、深刻な被害が起こるのです。

 アメリカの報告では、喫煙者との同居による受動喫煙が原因となる肺がん患者も多くいます。肺がんばかりでなく、狭心症や心筋梗塞のような心臓病を起こす原因ともなります。また、たばこの煙は、胎児や子どもにも悪い影響を及ぼすとされています。

たばこ価格が安い

 日本はたばこの価格が安く、課税率が低いことも問題で、1箱1000円にでも値上げすれば喫煙率が減ると主張する方もいます。

 現在、日本では公共施設の多くは禁煙となっていますが、まだ駅のプラット・ホームやホテルの一角には喫煙コーナーのあるのは問題です。

 日本では、多くの病院で禁煙となっています。私が理事長をしている東京都築地の聖路加国際病院では、1994年、つまり17年前に病院を改築した時から、いち早く職員も入院・外来患者も全て禁煙としています。


※当初、日本のたばこの課税率について「世界で一番低い」との表記がありましたが、誤りでした。お詫びして訂正します。

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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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