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[志茂田景樹さん]読み聞かせ 「感動」届ける

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「今後は児童書の執筆も活動の柱の一つにしていきたい」。後ろにあるのは、自作絵本「まんねんくじら」の原画(東京都内で)=清水敏明撮影

 4月初め、自身が隊長を務める「よい子に読み聞かせ隊」のメンバーと共に、栃木県内3か所を回った。東京電力福島第一原子力発電所の事故で、住民が身を寄せる避難所だ。隊員のバイオリン奏者らによる伴奏に乗せて、大型絵本を情感たっぷりに読み聞かせると、子どもたちは目を輝かせて聞き入った。

 作家活動のかたわら、58歳の時に絵本の読み聞かせを始め、12年になる。全国の幼稚園や保育園、小学校などで続けている読み聞かせ公演は1400回を超えた。

 中越地震や豪雪被害の被災地での読み聞かせも行った。「元気そうに見えても、被災地の子どもたちが抱える不安は大きい」と顔を曇らせる。

 今回訪れた避難所でも、読み聞かせの後、絵本にサインをしていると、小学生の男の子がふと「これからどうなるんだろう」とつぶやいたという。「この子らの心のケアにわずかでも役立つなら、被災地での読み聞かせも、機会あるごとに続けようと、思いを新たにしました」

 40歳で直木賞を受賞。奇抜な「カゲキファッション」でバラエティー番組にも出演し、超多忙な日々が続いた。

 出版社の求めに応じ、「売れ筋の小説を量産する」生活に疲れと疑問を感じ始めたのは、50歳代の半ばを迎えた頃。「自分が書きたいものを、誰にも気兼ねなく書きたい」と1996年、自らの出版社「KIBA BOOK」を設立した。

 PRのため全国の書店でサイン会をすると、大人だけでなく子どもたちの姿も目立つ。それなら絵本の読み聞かせをやってみようか、と思い始めた。98年11月、福岡市内の書店で「3匹のこぶた」など2冊を読むと、会場が静まりかえり、子どもだけでなく大人からも「良かった」「感動した」という感想が聞かれた。

 「僕自身も心が洗われ、すがすがしい気持ちになった。それなら続けてみようと思ったのが始まりでした」

 翌年8月に「読み聞かせ隊」を結成。居酒屋で開いたその結成式で、「来年の還暦の誕生日に僕は『新ゼロ歳』になる」と宣言した。現在の年齢は「新11歳」だそう。

 「60歳だからもういいや、と思ったら、夢も成長もなくなってしまう。まだまだこれから新しいことに挑戦していきたい。自分がゼロ歳ならば、2歳、3歳の子どもたちから学べることもたくさんある」

 読み聞かせの回数を重ねるごとに、「絵本を通じてなら、命の尊さ、生きることのすばらしさを、押しつけの言葉ではなく、感動とともに子どもたちに伝えられる」との確信を強めた。絵本や児童書の執筆も始めた。読み聞かせを自身の後半生のライフワークと定め、マイクロバスで全国を回りたい、絵本館を建てたい、と夢は広がっている。

 第二の人生を考える人には、「現役時代の競争社会から頭を切り替えて」と助言を送る。「60代、70代は、いかに自分自身の意欲を維持するかが重要。人と比較する必要はないし、物まねは通用しない。生きがいや楽しさを見いだすためには、『おまえはこれから何をしていくのか』と自分自身に問いかけていくことが大切だと思います」(森谷直子)

 しもだ・かげき 作家。1940年、静岡県生まれ。80年、「黄色い牙」で直木賞受賞。99年、初の原作絵本「つきとはくちょうのこ」発表。著作「蒼翼の獅子たち」を原作とする映画「学校をつくろう」が今年2月に公開された。

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