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高齢者の性・ブログ

yomiDr.記事アーカイブ

「勃起がないと、心・脳血管障害で倒れる可能性も」 熊本先生が寄稿 (後編)

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 熊本悦明・札幌医大名誉教授による「朝立ち」の意義についての寄稿後編です。

何故朝立ちが減退してくるのか

 “快調勃起”と紹介した朝立ちは、男性ホルモンのレベルと深い関係があると説明しておりますが、他に強い心理的ストレスとか高度の疲労とか様々な体調不全が原因で抑え込まれることもあり、個人的な問題点もあることは、付け加えておく必要があります。

 しかし、やはり加齢による男性ホルモン低下との関連が主因であることは間違いなく、その点を考えて、男性ホルモンのレベルをチェックしておく必要があること説明している訳です。

 細かい説明は複雑なので省かせていただきますが、男性ホルモンが低下してくると、2つの原因で陰茎血管系に問題が生じてくるのです。

 1つは血管壁の緊張をゆるめ、血管を開き血液導入を促進する一酸化窒素(NO)を出す能力が低下する為、夜の神経である副交感神経中枢の刺激への反応が弱くなり、充分な血液流入が起こらず、勃起が弱くなってくるということです。

 もう1つは男性ホルモン低下によって、メタボリック症候群などのコレステロール代謝障害による内臓脂肪肥満が起きて来て、それによる血管壁の動脈硬化が促進されてくるのです。 (一般的な啓蒙では、栄養の取り過ぎと運動不足などが、その原因として啓蒙されておりますが、男性の場合は加齢による男性ホルモン低下もかなり重要な要因なのです) 

 この2つの因子が折り重なって血管障害が進行して来るのです。

最少血管を持つペニス勃起の循環器医学における重要な意義

 最近、臨床上極めて重要な問題として注目され始めていることは、この血管障害の現象が、身体の細い血管のほうから起きてくることなのです。身体の臓器血管の中で一番細いのはペニスで1~2mm 、そして心臓が3~4mm 、脳が5~8mm なのです。

 それで、その細いペニスの血管障害で勃起障害になっていることは、同じ病変が全身的にも秘かに進行していており、徐々に心臓、更に脳の血管障害にも発展しつつあることを示唆しています。その為、勃起障害は、臨床的により重大な心臓・脳の血管障害にも進行していく可能性を強く示唆していると考えられるようになってきております。心臓・脳の血管障害は自覚は不可能ですが勃起障害は自覚できるので、注目されて来ているのです。

 最近の研究では、勃起障害のある方を調査すると心血管障害が非常に高率にあり、また脳梗塞発症もかなり多い。そこで今や、勃起障害は、全身医学の視点から、“心臓動脈障害の早期警告”であると言われるようになっています。勃起障害の背景にある男性ホルモンの低下の影響で、心・脳血管障害も次第に生じさせているとも言える訳です。

 60歳前後の男性で、突然心筋梗塞で倒れる方がいますが、そういう方は、その3~4年前から、自分だけが判る早朝勃起消失や所謂EDになっている筈ですが、特に気にしていなかったのです。

 とにかく勃起障害があることは、ペニスだけじゃなくて、さらに太い心臓・脳の血管にも障害が来はじめているという証拠であるわけで、国際的には、勃起障害(Erectile Dysfunction:ED)は、血管内皮障害(Endothelial Dysfunction:ED)そのものであるとして、“勃起障害は心血管障害の初期症状あるとも、言われているのです。

 勃起がないというのは、“男としての生理がなくなっている” 、 “男として枯れてきている”と言うだけでなく、心・脳血管障害でポックリ倒れる可能性が否定はできないのは問題ではないですか? 枯れてもいいのではないかと言う人もいますが、中高年男性として、気を付けなければいけない、無視すべきでない症状と思いますが如何ですか?

 先週も、名古屋での学会で循環器研究の内科教授が、内科側の立場から見て、わが国でも男性の勃起障害が、前述の様な全身的な血管障害初期症状として注目すべきことであると強調されていました。

 その為、少なくとも早期勃起自認がなくなれば、全身血管障害が進んでいる可能性を示唆していることから、是非成人ドックなどで、血中テストステロン測定を初め、血管の硬さのチェック、出来れば心臓血管の変化の検査などの健康診断を行う必要ありと言えるのです。突然心筋梗塞でバッタリ倒れたりしないように心がけるべきと考えています。勃起というのは、非常に大事な、自認できる男性生理だということを、中高年男性も自覚し、医師方もぜひ啓蒙して欲しいと強調しておきたいと思います。

21世紀はメンズ・ヘルス医学の時代

 我が国では、女性医療の遅れにのみに社会的注目が集まっておりますが、以上の様な知見が明らかになるにつれ、男性ホルン低下の著しい方は寿命が短いという調査成績が、外国はもとより我が国でも報告され、男性医学の立場から重視され始めていることも付け加えておきたいと思います。その為女性に比べ、男性の寿命が短い事の裏に急激な男性ホルモン低下があると考えられるようになりつつあり、“21世紀はメンズ・ヘルス医学の時代”であるとされつつあり、国際的に、男性医学への関心がかなり高まりつつあるのです。男性方がいつまでも元気で、長寿を全うして戴きたいと願っております。

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岩永直子

読売新聞 医療部記者

39歳、夫と二人暮らし

趣味は居酒屋巡りとダイエット

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7件 のコメント

勃起が教えてくれる散歩、STD対策も。

南十字星

「EDネットクリニック」という製薬会社のサイトに動画で見るEDの現状の中で勃起のメカニズム等の説明があります。心疾患に及ぶ前に脳の血管のほうが大...

「EDネットクリニック」という製薬会社のサイトに動画で見るEDの現状の中で勃起のメカニズム等の説明があります。
心疾患に及ぶ前に脳の血管のほうが大事でしょうから、頭部MRIなどでの健診もいいです。
血圧等のモニターを機器をつけて24時間分の収集をする事もできるので、医師の元へ相談もいいです。

心・脳血管とあるので、脳も大事ですね。
脳梗塞など機能異常防止対策でしょう。
勃起のメカニズムを知りつつ、内科や脳外科へ散歩にでるのもいいのではないでしょうか。

人間ドックも最近はオプションもとれるようになってますから内容も充実、日帰りでちょっとなど、粋というものでしょうね。

どこの科へ行くのか迷うところですけど、命に関わる臓器部分から診断をしてもらうのも、またひとつの手だと思います。心臓は脳がないと。

子宮頸がんワクチンで4価ワクチンが認可されましたね。男性は尖圭コンジローマ対策として使えるのかと、だれでも医師に相談できる便利な時代ですね。

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朝勃ちと心筋梗塞の関連性について

水戸拷問

先に熊本先生にお訊ねしましたが、判断資料としての大事なことを書き忘れました。 通常の朝の状態は7時くらいのポジションですが、頭をさすり「いいこ、...

先に熊本先生にお訊ねしましたが、判断資料としての大事なことを書き忘れました。 通常の朝の状態は7時くらいのポジションですが、頭をさすり「いいこ、いいこ」してあげると、9時くらいのポジションまでは頭をもたげてくれます。
つまり、毛細血管が完全に詰まっている訳ではないと思うのですが、これでも心筋梗塞の可能性があるのでしょうか?

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褌効果と先生指摘の

埼玉のシニア

褌効果と血管障害初期症状は関係あるような、無いような。良く判りません。昔から玉を冷やすことで男性機能が向上すると言いますが、確かにブリーフで締め...

褌効果と血管障害初期症状は関係あるような、無いような。良く判りません。
昔から玉を冷やすことで男性機能が向上すると言いますが、確かにブリーフで締め付けられていると心身ともに緊張しますが。
しかし先生指摘の早朝勃起不全は、血流の異常さからくる、と指摘していますので、玉のブラブラ加減ではないと考えますが。
やはりそこには食生活からくる肥満とか、色々と内面の問題があると考えます。
先生にお聞きしましが、日常の生活で最も注意することは
なんでしょうか。

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