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[読み得 医療&介護]傷病手当金、休職支える

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 サラリーマンが病気やけがで長期休職する場合、経済的な不安が重くのしかかる。東日本大震災の被災者にも、こうした人が多いだろう。大きな助けとなるのが、健康保険の「傷病手当金」だ。早期に療養し、復職できるよう、活用したい。(林真奈美、写真も)

受給期間は最長1年6か月

社会保険労務士の勉強会で、傷病手当金などの解説をする塚越良也さん(東京都内で)

 首都圏に住むシステムエンジニアのヒロシさん(32)は2年前、突然眠れなくなった。内科で睡眠導入剤を処方されたが、出社できない日が増えた。精神科を受診すると、うつ病と診断され、休職を指示された。

 妻と子供の3人家族で、貯金はわずか。何とか生活を維持できたのは、病気やけがで会社を休むと給付される健康保険の「傷病手当金」のお陰だ。月給が約30万円だったヒロシさんは、1か月に約20万円受け取れた。「病気で休んで手当金が出るとは知らず、一時は絶望的になった。本当に助かった」とヒロシさんは話す。

 傷病手当金は、サラリーマンが病気やけがで働けなくなり、休職して給料をもらえない場合に、健康保険(健康保険組合と協会けんぽ)から支払われる。理由は問わず、レジャー中のけがや精神疾患なども対象になる。労働者災害補償保険が適用される業務上の傷病は含まれない。有給休暇では足りない長期療養の際に、大きな助けになる。

 社会保険労務士の塚越良也さんは「サラリーマンのうつ病などが増えているが、休職には経済的な不安が大きい。傷病手当金をもらって早めに治療に専念すれば、回復も早い。会社の利益にもなる」と強調する。

 連続して3日間欠勤すると、4日目以降の欠勤日に対して支給される。金額は1日につき賃金日額(おおむね月給の30分の1)の3分の2。ただし、欠勤しても賃金が支払われる場合はその分が減額され、賃金の方が多ければ支給されない。

 支給期間は最長1年6か月。この間に出勤すると、その日については支払われない。請求は、1か月程度の期間ごとに、会社を通じて加入する健康保険に行う。毎回、就労不能を証明する医師の意見書と、会社の休職証明が必要だ。大企業に多い健康保険組合では、支給額の上乗せや、支給期間の延長をする場合もある。

 ただ、中小企業では制度をよく知らず、受給できるのに請求しないまま退職し、困窮する例もあるという。社会保険労務士の佐々木久美子さんは「本人が手続きをするのは困難な場合もある。会社や家族のサポートが重要」と指摘する。

 制度を有効活用するためには、ポイントがある。

 支給額を決める賃金日額は、毎年4~6月の平均賃金に基づき9月に変更される。4~6月の間、ずっと欠勤なら前年のまま維持されるが、“リハビリ出社”などで賃金を得た日が17日以上の月があると、その月収により変更される。減額になれば支給額も下がる。

 支給期間内なら退職しても受給できる。ただし、退職日の時点で健康保険の加入期間が連続1年以上あり、欠勤日数などの受給要件を満たす場合に限られる。

 退職しても、雇用保険の失業給付と同時にもらうことはできない。失業給付は働く能力と意思のある人が対象なので、受給できるのは、働けるまで回復し、傷病手当金が終了してから。ただ、失業給付の支給期間は通常1年間と短い。そこで、退職後すぐに期間延長の手続きをしておきたい。病気などで働けない期間があれば最大4年になる。

 病気やけがの状態によっては、障害年金が受けられる。障害厚生年金を受給すると傷病手当金が減額されるが、合計額は減らない。療養が長引く場合、傷病手当金の受給期間が過ぎた後の支えになる。早めに請求手続きをしたい。「障害年金の支給決定には何か月もかかり、傷病手当金が切れてからでは、収入が途絶える期間が生じる。傷病手当金の受給期間を、将来への準備期間と考えてください」と佐々木さんは話している。

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