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介護・シニア
[震災・生活ドキュメント]介護現場過密、ケア窮地
東日本巨大地震で、「災害弱者」となりがちな要介護高齢者のケアにあたっている介護職員から、声にならない悲鳴が上がっている。無事だった介護施設には被災者が集中しており、過密状態で仕事にあたる職員の疲労はピークに達している。(飯田祐子、写真も)
避難者が集中/認知症悪化も
宮城県東松島市にあるケアハウス「はまなすの里」。津波による浸水を免れたため、被災直後から、近くの特別養護老人ホームやグループホームの入居者、職員らが避難してきた。
定員39人の施設に、避難してきた人を合わせ高齢者が約50人、それに家族や職員も加えた計約80人が暮らす。被災から1週間後には電気が復旧したが、29日まで水道は断たれたままだった。職員は、飲み水にする湧き水をくみ、トイレに流す水を池から運んだ。
認知症の人の中には、地震が起きたことを忘れてしまい、「なぜ、こんな不便な思いをしなくてはならないのか」と繰り返し不満を漏らす人も。一方で、小さな余震にも「津波が来る」と不安がる人もいる。
個室の床に布団を敷き、2、3人の高齢者が一室で眠る。食堂の床で寝る高齢者の布団をかけ直していた職員の阿部浩幸さん(50)は「被災して出勤できない職員がいるため、勤務がきつくなっている。ずっと泊まり込んでいる職員も少なくない」と話す。
同県石巻市の特養「おしか清心苑」の状況はさらに深刻だ。定員60人の施設に、近くのグループホームから避難した高齢者と職員、被災した職員の家族らを加えた約120人が寝泊まりする。中心市街地から20キロ・メートル離れた牡鹿半島の先端にあり、ガソリンも底をついたため、二十数人の職員は3週間、ほとんど泊まり込み。体調を崩す職員も相次ぐが、近くの病院で点滴を受け、仕事に戻っている。
地震による地盤沈下などで十分な支援物資が届かず、おむつや食料も不足しがちだ。停電で空気マットの電動ポンプが使えない上、栄養不良が追い打ちとなり、一部の高齢者に床ずれができ始めている。認知症の悪化が見られる人もいる。
生活相談員の木村優子さん(33)も、おむつ交換などに当たる。「精神的に不安定になった人が夜間も起きているので、仮眠も満足にとれない。職員を休ませたいが、交代できる職員がいない」と窮状を語る。
阪神大震災の際、介護施設に被災者を受け入れた神戸市の社会福祉法人「神戸福生会」の中辻直行理事長は「職員も当初は気が張っているが、2週間が限界。ストレスにより、突然泣き出す、パニック状態になるなどの症状が出た。被災当事者でもある職員の休息が必要。応援職員の派遣が急がれる」と指摘する。
厚生労働省は、人手が足りない被災地に全国の介護施設などから職員の派遣を始めており、29日までに、岩手、宮城、福島の3県に164人が派遣されている。
「震災 生活ドキュメント」では、東日本巨大地震でくらしに様々な影響を受けた人たちの「いま」を報告します。
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