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解熱鎮痛薬のアスピリン、古代ギリシャに由来

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セイヨウナツユキソウの花
 
 
 
「バイエル」アスピリン 昭和10-21年製
 
 

 春風になびくヤナギは風情があります。バラ科のセイヨウナツユキソウも、くすり博物館の薬草園で夏に白くかわいらしい花をたくさん咲かせます。薬草園で花を見ていると、ある植物がある病気の薬になるということを昔の人はどうやって知ったんだろうか―― 私はいつも考え込んでしまいます。

 地中海に生育するセイヨウシロヤナギは、ヨーロッパでは古代ギリシャ時代から樹皮を煎じた汁を痛風の薬としました。水や薬で患部を冷やしたり温める罨法(あんぽう)という方法で用いたそうです。セイヨウシロヤナギの煎じ汁はこのほかにもリウマチや神経痛、歯痛の痛み止めとして、何世紀にもわたって用いられてきました。

 時代は下って1763年、イギリスのストーン牧師がこのヤナギの抽出物を解熱剤として使えることを発見しました。当時マラリアの治療に使われていたキナ皮の代用薬として用いられたのです。

 1830年、ヤナギからサリシンという物質が抽出され、サリシンからサリチル酸が作られました。1835年にはセイヨウナツユキソウからスピール酸という物質が発見されました。全く違う植物から得られた物質でしたが、1853年にこの二つは同一の物質であると確認されたのです。そして合成して工業生産されるようになりました。

 サリチル酸は当初酒の防腐剤に用いられていました。(現在では防腐剤としての使用は禁止されています)。やがて解熱・鎮痛作用も明らかになり、医薬品としても利用されるようになりました。ただ、リウマチの薬として用いられていたサリチル酸ナトリウムには吐き気の副作用がありました。製薬メーカー・バイエルの化学者ホフマンは自分の父がこの副作用に苦しんでいるのを見て、副作用の少ない薬を作ろうと決意しました。既にアセチルサリチル酸の合成は成功していましたが、ホフマンは純粋な形でこれを合成することに成功し、1899年にアスピリンという名前で販売されるようになりました。

 現代ではサリチル酸といえば、腐食作用があるためイボ取りの薬に用いられています。また、消炎作用のあるサリチル酸メチルは湿布薬に配合されています。アセチルサリチル酸は現在でもアスピリンを始め、解熱鎮痛剤に含まれています。このように、サリチル酸の仲間は薬の中でも比較的身近な存在といえるでしょう。でもそのルーツを古代ギリシャまでさかのぼることができるのにはビックリしますね。

 昔の人たちが「これは効くんじゃないか?」と思って使ってみてくれたからこそ、今の私たちが薬の恩恵にあずかっているわけです。私たちも後世の人に「これはいいね」と言ってもらえるような何かを残していきたいものです。(内藤記念くすり博物館 稲垣裕美)

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