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世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ

yomiDr.記事アーカイブ

自分はまだマシ

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 日本が試されています。

 そして被災した東北の皆さんに世界中が注目しています。粘り強さ、冷静さ、律義さに感動しています。心無いメディアの取材にも丁寧に受け答えする礼儀正しさも光っています。

「命が助かっただけでもありがたい」

「もっとつらい目に合っている人もいる」

 そんな言葉を日本中の人達が耳にしました。

 「自分はまだマシだ」という被災した方々の力強い、ポジティブな考え方。これは「どこを基準に置くか」、ということだと思います。

 何不自由ない、平穏で健康な生活。好きなものをいつでも好きなだけ食べることができ、あったかくて清潔な環境。これが基準、つまりあるべき状態とするなら、被災地の皆さんはずいぶんと落ち込んだ位置に置かれてしまいます。

 震災では多くの人たちの命が奪われました。「自分のそうなっていたかも知れない・・・」。それを基準と考えるなら、今の状態は上かもしれません。

 若くして心臓弁の手術を受けなければならない状態の患者さんがいます。私なら「何でこんなことになったんだ!」などと自分の境遇をのろうかも知れません。あるいは自分を生んだ親のせいにしてしまうでしょうか。

 ところが彼は言ってのけました。

「手術を受けなければどうなるか、という状態と比べたら、手術を受けた後の状態はずいぶん上じゃないですか」。

 人工弁のメインテナンスに薬を毎日飲まなければなりません。「ワーファリンを一生飲む、ってことでちょっと下がりますけど、それでもまだまだだいぶ上の状態ですよ」

 自分の今の状態は「あったかもしれない状態」に対してプラスなんだ。これで人間はどのような状態からでも出発できるということを、若者は私に教えてくれました。

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南淵明宏ブログ_顔87_87替

南淵明宏(なぶち・あきひろ)

1958年大阪生まれ。大崎病院東京ハートセンター(東京都品川区)のセンター長。心拍動下(オフポンプ)冠状動脈バイバス手術のスペシャリストとして年間200例以上を執刀する心臓外科医。

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2件 のコメント

比較する基本

Guy

比較するとき、自分の中の絶対値なのか、他(特に他人)との相対値なのか、大切なことだと思います。自分はまだマシだと先生が記事を書かれているのはとっ...

比較するとき、自分の中の絶対値なのか、他(特に他人)との相対値なのか、大切なことだと思います。
自分はまだマシだと先生が記事を書かれているのはとっても優しさがあって納得はしますが、ちょっと読み違えると、差別的にとられかねない。
私は障害児学校の講師をしていましたが、親の言葉によくでてきたのが、「うちの子はあそこの子よりはまだマシ」だということです。もちろん声高には聞きませんが、心の中にうづくもっているのは確かです。
人はやっぱり自分より下の人がいるのが安心なのでしょう。他人と比較するとその意味の取り違いが逆に人をおとしめることになるのは恐怖です。そんなつもりで言ったんじゃないって。
商品のCMで、自社の商品との比較と断って宣伝しているのもその一つでしょう。
その若者が自分の考えのなかで、自分の人生を比較しているのは納得です。頼もしいです。
話は変わりますが、私は先生の「名医はブラックジャックと俺に聞け」なんていうタイトルの本がありまして、強烈な印象でファンになったものです。とにかくタイトルが結構強烈なんですよね。最近はそういう感じではなく、あの日野原ドクターみたいな雰囲気に感じます。比較すると、やっぱり強烈なものが好きでそっちを期待しているんですが・・・

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謙虚なプラス思考

春まってるよーー

自分はまだマシだ。という考え方。。。ホントにそうですね。大切なことだとおもいます。被災にあわれてもなお多くの方たちが、;まだ。マシです;という謙...

自分はまだマシだ。という考え方。。。ホントにそうですね。大切なことだとおもいます。
被災にあわれてもなお多くの方たちが、;まだ。マシです;という謙虚な言葉に、人間本来の力のすごさを みせてもらいました。困難に立ち向かう勇気、心さえ負けなければ、何があっても大丈夫。謙虚なプラス思考こそが 
よりよく生きる術ですね。わたしも自分の基準について、振り返るようにしたいと思いました。

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