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震災に遭った時(6)心のケア「聞き取り」慎重に

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 大災害の時には、精神科医らによる被災者の心のケアが必要とされる。今回の地震では、日赤チームなどが活動を始めている。

 1995年の阪神大震災では、被災者の1割が、1年後も睡眠障害などの心の不調を訴えた。中には、後になって恐怖体験が繰り返しよみがえるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ人も少なくない。

 だが、専門知識を持たない人が心のケアを行うと、逆に被災者を傷つける恐れがあることに注意したい。

 つらい体験をした人は、話を真剣に聞いてもらうと心が軽くなる。災害の場合でも、精神科医らが被災者の体験を災害後間もなく詳細に聞き取ると、PTSD発症の予防になる――と、かつては考えられていた。

 ところが海外の追跡調査で、こうした聞き取りが、逆にPTSDの患者を増やすことが分かった。米国の研究機関の国立PTSDセンターは、災害に遭った人すべてが話をしたがっているわけではない、と指摘している=表。

 兵庫教育大発達心理臨床研究センター教授の市井雅哉さんは「いま最も必要な心のケアは、避難所の環境を整え、被災者の気持ちが落ち着く場所を早急に提供することだ。仮設住宅に移る場合でも、家族や近隣住民らと近くにいられる配慮をしてほしい」と話す。

 そのうえで専門家は、被災者が悩みを自然に話したくなった時に耳を傾け、うつ症状や不安感がひどい人がいれば治療につなげることが必要だ。

 一方、首都圏に住む人にも心の不調が広がっている。

 慶応大保健管理センター教授で精神科医の大野裕さんは「症状が長い間安定していた精神疾患患者が、地震後に不安定になる例が目立つ。健康だった人が、家の外に出られなくなったケースもある」と指摘。津波の映像の繰り返しや原発事故の恐怖を伝える報道が影響している、とみる。

 大野さんによると、いま必要なのは、日常生活のリズムを取り戻すこと。「テレビの震災報道ばかりではなく、地震の前のように、バラエティー番組を見て笑うことも大切だ」と話す。 (館林牧子、藤田勝、佐藤光展、渡辺理雄、中島久美子、利根川昌紀、竹内芳朗)

■被災者に接する時の注意点

 (米国立PTSDセンターなどがまとめた「サイコロジカル・ファーストエイド」より一部抜粋)

 ◎被災者が体験したことや、いま体験していることを、思い込みで決めつけないでください

 ◎災害に遭った人すべてがトラウマ(心の傷)を受けるとは考えないでください

 ◎災害に遭った人々が経験したことを考慮すれば、(不眠や不安、悪夢など)ほとんどの急性反応は理解可能で、予想範囲内のものです。(起こって当然の)反応を「症状」と呼ばないでください

 ◎すべての被災者が話をしたがっている、あるいは話をする必要があると考えないでください

 ◎(何があったか尋ねるなどして)詳細を語らせないでください

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