文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いきいき快適生活

介護・シニア

[認知症と向き合う](11)「大切なもの」共有する心

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 私は、主に認知症の方々を訪問して診療しています。最近、ある質問をするようにしています。それは「あなたにとって大切なものは何ですか」という質問です。

 「もの」に限りません。人であったり、思い出であったり、何でもよいのです。認知症が進んでいるなあ、と感じる人に尋ねてみても、意外にいろいろお話ししてくださいます。

 ある人は「娘と一緒に買い物に行くこと」と答えられました。さらに尋ねると、その方が50歳くらいの時の話のようでした。その時までは、自分の着物を質に入れるほど、生活が大変だったようです。しかし、夫の事業がうまく回り始め、ほっとしたのでしょう。

 いとおしい娘さんと一緒に買い物に行った光景が目の前によみがえったかのように、うれしそうに話してくださいました。娘さんもその話を聞いて、感慨深げに「私、その話、初めて聞いた」と驚かれていました。

 その人の大切なものの話を聞くと、不思議なことに、第三者の私ですら、その人を大切に思う気持ちが芽生えてきます。相手は迷惑かもしれませんが、相手を大切に思う気持ちが一層強まってくるのを感じます。

 自分が認知症になるかもしれないと思うと、やはり、恐怖心や喪失感、絶望感などが襲ってきます。アルツハイマー型認知症の進行を抑える薬の承認が相次いでいます。ですが、今のところ、認知症になること、そして、薬によってその程度を遅らせることはできても、症状がやむなく進行していくことは、避けられないことといってよいでしょう。

 絶望感の中からの救いのヒントとして、「自分が大切にしているものが、周囲からも大切なものとして思われること」が大きいように、診療を通じて感じています。(木之下徹、「こだまクリニック」院長)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

いきいき快適生活の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事