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対談(1)心も元気にする運動の力

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 西野さんの冒頭の発言に続いて、金さんとの対談が始まりました。

NPO法人ニッポンランナーズ理事長:金 哲彦
西野医院院長:西野 弘美
読売新聞東京本社医療情報部長:田中 秀一
 田中 最初に、なぜ運動が私たちに大切なのかということを、改めて考えてみたいと思います。運動しないと何で体に悪いのか、あるいはどういう病気になりやすいのでしょうか。

 

 西野 特に糖尿病が挙げられると思います。戦後、爆発的に増え、大きな病気の基礎的な疾患となっております。脳卒中も、糖尿病の人と、糖尿病でない人を比べると、発症率が何倍も違うんですね。心筋梗塞も、再発の割合よりも、糖尿病の人が初めて発症するほうが多いと言われています。それほど糖尿病の人は病気になりやすいんですね。

 運動はすべての病気に関連しています。どんな病気になりやすいのか、一言では言えないくらいです。

 田中 金さんは、運動の効用を説くときに、なぜ運動が大切なのかということを、どのように説明されているんでしょうか。

  例えば坂本竜馬の時代は、高知から江戸まで歩いていました。昔から人間というのは、体を動かすのが当たり前だったんですね。それが、ここ100年ぐらいの間に交通が非常に便利になって、どんどん体を使わなくてもよくなってきているんですね。この10年、20年、加速度的に体を使わなくなってきています。運動はなぜ必要か、それはもともと人間の体というのは、体を動かすようにできているからだ、ということですね。

人間は本来、動く生き物

 田中 人間は本来、動物、動く生き物だということですね……。

  そうです、動物なんです。

 田中 金さんは、冒頭の基調講演で、食事と睡眠と運動の三つが健康の基本であるとお話しされました。運動することが、食事とか睡眠に対して、どういうよい効果があるのか教えてください。

  食事がおいしく食べられるということが、まずありますね。何もしないで、朝昼晩の食事をきちんとバランスよく食べていたとします。ある人は、ずっとその間じゅうテレビを見て、少しも体を動かさなかった。ある人は、外に出て、30分とか1時間の散歩をして、次のお昼ご飯を食べた。どちらがおいしいかといえば、運動していた人のほうが、それだけエネルギーを使っているわけですから、空腹感も起きますし、より体が欲してくるわけですから、確実においしく食事ができますね。

 睡眠の面に関しては明らかで、寝られない、不眠症の人というのは、ずっと自律神経のうち交感神経が高ぶった状態で、寝られなくなっているわけです。運動することによって、運動というのはもちろん交感神経が高まった状態でやるわけですけれども、体を動かしたことによって、もう一方の副交感神経がしっかり働くようになり、ぐっすり、深く眠れるようになります。

 田中 西野さんに伺います。運動にはいろいろな病気を予防する効果ばかりではなくて、病気を治す効果もあるということですが、実際に診療なさっていて、どのような例があるのでしょうか。

 西野 特に糖尿病の方は、運動しますと、どんどんデータがよくなってきます。

 ある糖尿病の患者さんは、脳梗塞も経験していらっしゃいますから、歩くのがちょっと不自由なんですが、歩くのを日課にするようになりましたら、以前はとても暗い感じの方でしたけれども、非常に明るくなりました。

 また、別のおばあさんも糖尿病で、ほんの少しだけ薬を出しておりましたが、毎日歩いていました。今年のように寒い年でしたけれども、家族から、おばあさん、こんなに寒いし、インフルエンザもはやってきたんだから、歩かないで、こたつにでも当たっていたら、と言われたというのですね。けれどもこのおばあさんは、いや、私は糖尿病なんだから、歩かなくちゃだめなんだと、一生懸命頑張って歩いていました。そのうち、風邪がどんどんはやってきて、家族全員が風邪で倒れたんですね。でもこのおばあさんだけは元気で、その冬を過ごしました。

 

 田中 実にすばらしい効果ですね。次に伺いたいのは、運動と心の関係です。金さんのお話でも、運動は、心にもいいということですが、そこをもう少し詳しく伺いたいと思います。

  今はジョギングブームと言われていまして、皇居の周りを走っている人が一日に4000人から5000人ぐらいいるんです。すごいですね。昼休みに走っている人たちは、デスクワークで頭を酷使したり、目を酷使したりしていますから、ストレスを発散して、仕事の能率、効率を上げようとしているのでしょう。

居酒屋での会話内容で、運動しているかどうか分かる

 私も、ランニングを一緒にやった後、神田とかの居酒屋に行って飲むことがあります。その時の会話の内容ですが、ランニングのグループと会社の仕事帰りのグループでは、全く会話の内容が違うんですね。運動をやらなかった人たちの会話というのは愚痴です。(笑)ほんとに。運動をやった人たちは一切愚痴を言わない。ランニングの世界しか私は知りませんけど、ランニング仲間が話す会話というのは一切愚痴がなくて、ランニングの話しかしないんです。そして、笑顔ですね。人の悪口は一切ないですから、笑顔で話をして、すっきりして、また次の活力を得ます。そういった効果もありますね。

 田中 居酒屋で会話をしていると、運動しているかしていないか、わかっちゃうわけですね。(笑)気をつけます。

 西野さん、運動と心の健康ということについては、いかがですか。

 西野 私の医院では心療内科も標榜しておりまして、今は心を病んでいる方も多いんですね。そういう方に、私は必ず運動をするようにとお話ししております。そういった方が運動をしますと、次第に心が明るくなってくるんですね。運動をしますと、脳の中に、エンドルフィンと言う、麻薬に似た物質が出てきて、非常に快適感を感じるようになります。

 それから、運動をすると、思考や感情を伝達する、脳の伝達物質の分泌も増加します。これは脳を活発にして、そしてやる気を起こさせるんですね。うつ病にも非常に効果があります。運動することは、心を楽しくしてくれますし、うつ病の予防にも、治療にもなります。(続く)

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