脚本家 北川悦吏子(きたがわえりこ)さん 49
一病息災
[脚本家 北川悦吏子さん]難病(4)ささいなことを大切に
大手術からわずか数か月後の2010年初め、せきを切ったように仕事を再開した。連続ドラマ、単発ドラマ、映画――。「やっぱりすごく書きたい、元の私に戻りたいという気持ちが強かったんですね」
とはいえ、体調は油断ならない。
「疲れやすくて、体力は人の5分の1くらい。だから、一つ一つのささいなことをすごく大切にしたい。仕事も一歩ずつ、ていねいに大事にやっていきたい」
そんな思いが作品に表れるのか、友人の漫画家けらえいこさんには「どんなことも宝石みたいにきれいに書くね」と評された。
闘病体験を語るうち、新しい企画が浮かんだ。「医者側からでも看護師側からでもなく、入院患者側から見た病院もの」。今、病院が舞台のドラマは多いが、患者はいつも脇役だ。「病院は私のふるさとみたいなもの」と感じる自分だからこそ、見えるものがある。
病気の人は大勢いる。健康でも、仕事や生活がうまくいかない人がいる。
「頑張ろうと思っても、乗り越えられないことは多い。荷物を背負ったまま歩くしかないなら、それでも元気にやっていく方法をみつけてほしい」
そんなメッセージを送る作品を、これからも届けるつもりだ。(文・高梨ゆき子、写真・和田康司)
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