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緩和医療医・大津秀一さんインタビュー全文(1)治る人も治らぬ人も同じ治療でよいか

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 人生の最後に、人は何を思うのだろうか。患者の苦痛を和らげる緩和医療医として、1000人以上をみとった経験から「死ぬときに後悔すること25」を書いた大津秀一さんに聞いた。

大津秀一(おおつ・しゅういち)
 1976年、茨城県生まれ。岐阜大医学部卒。東邦大医療センター大森病院緩和ケアセンター勤務。近著に「死ぬときに人はどうなる 10の質問」。

 ――なぜ緩和医療医になったのですか。

 大津 医師になって3年目、消化器内科を担当していた時、末期のがんで重い病状の患者が多く、なかなか苦痛がとれませんでした。そんな時、大阪大学の緩和ケア医、恒藤暁教授が書いた「最新 緩和医療学」を読んで、症状を和らげる方法があるのを知り、目からうろこが落ちました。その本に従い、胸水がたまって苦しんでいた患者にステロイド剤を使ったところ、ピタリと治まった。これは驚きで、緩和医療はすごいなと思いました。同じように、腸閉塞や、骨転移の強い痛みもコントロールできるようになり、緩和医療の世界に飛び込みました。

 それまでは、がん患者が亡くなる時、ご家族には外に出ていただいて、30分ほど蘇生措置をして、呼吸や心拍が元に戻らないことを確認して家族に戻ってきてもらい、死亡宣告していた。テレビドラマにあるような、患者が「ありがとう」と最後に言う光景とはあまりに違う。「患者や家族は、こんな蘇生措置を望んでいるのだろうか。患者が最後にそばにいて欲しいのは、僕たち医者じゃないはず」と考えていました。治る人も治らない人も同じように治療されていて、「これでいいのか」と迷いがあった時に、大事なのはQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)だ、その人を支えてあげるのが医療だと思ったのです。

 ――治る人も治らない人も、同じような治療がされていますか。

 大津 ある日、当直していたら、膵臓がんの患者さんが、糖尿病もあるのに、インスリン注射を拒否している、と看護師に呼ばれた。病棟に行くと、その患者は「僕は余命1、2か月と宣告されています。1日4回、血糖値を測って、インスリン注射することに意味があるのですか。血糖値は何年後かに合併症を出さないために下げるものでしょう。なぜ余命わずかな僕に必要なのですか」と聞く。彼の言う通りです。それまでは何の疑問もなく、血糖が高ければコントロールするものだと思っていた僕にとって、雷が落ちたような衝撃でした。

 僕たちがよかれと思ってしていたことは、患者から見ると全然見当違いなのではないかと思うようになりました。末期がん患者に点滴をすると、むくみが出てかえって苦しくなる。そこで点滴を減らすと、緩和医療を知らない病院では「安楽死させる気ですか」と言われる。みんなを納得させられる経験を積もうと、緩和医療をしている京都の日本バブテスト病院に移りました。そこで、患者の家族を支えることや、看護師やソーシャルワーカー、宗教家、ボランティアの力も合わせるチーム医療を学びました。

 ――次回から、「死ぬときに後悔すること」について聞きます。(続く)

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