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桃の節句と淡島信仰、雛祭りに結び付く

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       桃の花(バラ科) 落葉小高木
 
 

 「桃太郎」は昔から多くの人にとってなつかしいおとぎ話ですが、 桃は魔除けや、神聖な果実として神話などにも登場します。

 桃は民間薬としてもよく使用されてきました。例えば、桃の葉を陰干しにして保存したものを、布袋に入れて湯に浸して入浴(桃湯)や行水をすると、幼児のあせも、その他かぶれなどに良く効くといわれます。

 薬用にするのは種子(桃仁 =とうにん=)と陰干しにした花(白桃花 =はくとうか=)です。桃仁は脂肪、油、アミグダリンなどを含んでいます。「日本薬局方(日本の医薬品の品質などの基準を定めた公定書)」にも収載されており、漢方では消炎、鎮痛などの目的で使われます。白桃花は煎じて利尿剤とします。

 さて三月三日の上巳(じょうし)の節句は桃の花が咲く季節にちなみ、桃の節句といわれます。桃の呪術的信仰にまつわる風俗は中国から伝わりました。中国では桃は仙人の食べ物といわれ、俗世間と離れた別世界を桃源郷とも呼びました。また桃花酒を飲んで邪気を払い不老長寿を祈念しました。これが後になって女の子の成長を祝う行事となりました。

 一方、日本古来の信仰として淡島信仰があります。これは和歌山の淡島神社を本社とし、その祭神を医薬や航海の神として崇拝するものです。近世になって婦人病や安産などの女性を救済する神として一般に広まったようです。婦人病を患った淡島さまが島に流され到着したのが三月三日。淡島さまは綾絹で人形(ひとがた)を作り、その病を除くためにそれを海に流しました。これが雛祭りの起源だといわれています。

 雛人形はこのように、本来は人の形を模した形代(かたしろ)であり、身についた穢(けが)れを移して海や河川に流す風習でした。平安時代に雛流しの行事になったといわれます。 現在でも地方に存在する「流し雛」の習俗はこの遺風(いふう)を伝えるものといえます。鳥取の用瀬(もちがせ)や和歌山の粉河地方でも流し雛の行事がみられます。

 現在のように同じ雛人形を毎年飾るようになったのは江戸時代以降です。庶民の人形遊びと節句が結び付けられ行事となり発展していきました。人形と桃で邪気や穢れを払う風習は、21世紀の現在まで連綿と受け継がれています。(内藤記念くすり博物館  伊藤恭子)

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